インドにおける個人の確定申...

インドにおける個人の確定申告および資産開示制度について

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日本と違ってインドでは法人、個人ともに4月から翌3月までを課税期間として規定しており、インドにおける個人の確定申告期限は7月末です。日本のサラリーマンは会社が本人の代わりに年末調整を実施することによって、個人所得税の納税がいつの間にか勝手に完結しているケースがほとんどなので、“確定申告”そのものを行ったことがない方は多いと思いますが、インドには年末調整という制度はなく、個々人が確定申告を実施する必要があります。また、インド現地法人のいわば“経営者”という立場で駐在している日本人も多く、日本国外に出てから初めて税金の仕組みや税金コストの負担を強く実感された方も多いのではないでしょうか。今回は、インドにおける個人の確定申告および開示制度についてご紹介をしたいと思います。

 

 

「インド在住日本人が納付すべき個人所得税が高いわけ」

日本人駐在員の中には、ご自身の確定申告書を見て「こんなに給料はもらっていないはずだ!」「え?こんなに税金を払っているの?!」などと驚かれた方も多いのではないかと思います。例えば、駐在員の場合、多くのケースにおいて、インドでのアパート家賃、通勤やプライベート用のレンタカー代、買い出し休暇やリフレッシュ休暇、日本一時帰国の補助など、現金で支給されている給料以外に様々な手当や補助が現物支給されています。これらの現物給与(=従業員の代わりに会社が負担をしてくれるもの)は当然、個人の“課税所得”として認識されますが、これら全ての所得を合計した金額に対して課税される個人所得税も会社が代わりに負担をしてくれているケースがほとんどです。つまり、この会社が代わりに負担をする税金も現物給与として認識され、さらに“課税所得”として加算されます(※一般的にこの計算方法を“グロスアップ”と言います)。その結果、確定申告書には、会社が納税してくれた税金(=給与としては受け取っていない税金)も自分の所得に含まれているため、「こんなに給料はもらっていないはず」と感じるわけです。

なお、現地採用の場合は、日本とインドの所得税率の違いによって、税金の負担が重くなっている可能性があります。つまり、年収300万円の人は、日本だと税率が10%ですが、インドだと税率は30%です。(※比較を簡略化するため住民税は考慮していません。)日本とインド共に所得に比例して税率が高くなりますが、インドは所得水準が低いため、雇用ビザで勤務するほとんどの外国人は必然的に最高税率が適用されてしまうわけです。

 

日本の所得税率(2015年度以降分)

所得金額

税率

195万円以下 5%
195万円を超え、330万円以下 10%
330万円を超え、695万円以下 20%
695万円を超え、900万円以下 23%
900万円を超え、1,800万円以下 33%
1,800万円を超え、4,000万円以下 40%
4,000万円超 45%

 

インドの所得税率(2016年3月期)

所得金額(1ルピー=1.5円換算)

税率

25万ルピー(約38万円)以下 免税
25万ルピーを超え、50万ルピー(約75万円)以下 10%
50万ルピーを超え、100万ルピー(約150万円)以下 20%
100万ルピー(約150万円)超 30%
※1,000万ルピー(約1,500万円)超 サーチャージ12%追加

 

 

「租税回避行為を取り締まる世界とインドの動向」

  モサック・フォンセカ法律事務所のパナマ文書に代表される租税回避行為が世界的にも注目されており、それらを取り締まる動きが活発になってきています。脱税や非合法な取引によって生まれるブラックマネーは犯罪組織の資金源にもなっており、従来から多くの国で指摘されています。これらの動きを背景に、日本でも2014年から国外財産調書制度が導入されました。つまり、時価5,000万円超の国外資産を保有している場合、「国外財産調書」として確定申告時に税務署に保有資産を開示することが求められています。もし開示を怠ったり虚偽の記載をすると1年以下の懲役または50万円以下の罰金です。いわゆる“お金持ち”を対象にした規制のわりには罰金の金額が低いような印象を受けますが、以前は同様の制度があったにもかかわらず罰則規定がなかったことを考慮すると、徐々に厳しくなってきていると言えます。そして、昨年2015年にインドでもブラックマネー法(The Black Money (Undisclosed Foreign Income and Assets) and Imposition of Tax Act, 2015)が施行されました。従来から、インドにおいて「通常の居住者(ROR)」の居住ステータスに該当する人(=過去10年間で2年以上インド居住者であり、かつ、過去7年間で730日以上インド滞在している人)は、全ての国外保有資産および当該資産から得ている所得の開示が求められており、つまり、インド駐在3年目あたりから全世界所得課税かつ全世界資産の開示が必要でしたが、当該ブラックマネー法の施行により、2015年3月期以降、開示を怠った場合の罰則規定が明記され、高額な罰金に加えて10年以下の禁固刑という非常に厳しい罰則が科せられることとなりました。(※非居住者ステータスの期間に新規取得した資産で、当該資産から所得を得ていない場合は開示不要。)

 

 

「新たに追加されたインド国内資産及び負債の開示要件」

 さて、居住ステータスが「通常の居住者(ROR)」でなかったとしても(つまり、「非居住者」や「非通常の居住者(RNOR)」であったとしても)、従来から一定の条件を満たす者は個人資産の開示義務が規定されていました。つまり、250万ルピーを超える事業所得もしくはコンサルタント報酬等(=給与は含まない)を得ている者は、個人が保有するインド国内資産及び負債を開示しなければなりませんでした。しかしながら、2016年3月期以降は、上記の金額基準が500万ルピーに引き上げられる代わりに、従来の対象者に加えて給与所得者を含む一定の者(日本人駐在員を含む)が新たに対象となり、開示義務のある対象者が大きく拡大されました。(※なお、従来は300万ルピーを超える一定の純資産を保有する個人は、300万ルピーを超える部分の1%を富裕税(Wealth Tax)として申告・納税する必要がありましたが、2016年3月期以降は廃止されています。)多くの日本人駐在員は、インド国内で資産を保有するケースは少ないため、実務的には現預金残高や車両等の限定的な資産開示に留まるケースが多いですが、「通常の居住者(ROR)」に該当した場合には罰則規定が厳しいため、申告すべき所得および開示すべき資産には引き続き注意が必要です。特に、Entry Visa等で帯同している配偶者が「通常の居住者(ROR)」に該当した場合、インドでは一切所得を得ていないにもかかわらず、日本において不動産収入や配当所得、利子所得等を得ているような場合、インドにおいてすべての所得を申告・納税、さらに資産等を開示する必要がありますので注意が必要です。

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