インド新会社法(2013年)

インド新会社法(2013年)

2013年インド新会社法の概要③「重要な管理職」や「監査人」に関する改正

前回に引き続き、今回は「重要な管理職」や「監査人」に関する改正点についてご紹介します。

 

 

(1)重要な管理職(Key managerial personnel)に関する変更(新会社法:第203条)

旧会社法において払込資本額が5,000万ルピー以上の公開会社にのみ義務付けられていた“重要な管理職(Key managerial personnel)”の設置が、新会社法においては、上場会社及び払込資本額が1億ルピー以上の公開会社に対して適用されることとなりました。“重要な管理職”には、以下のような役職が該当します。

(1)  取締役社長(CEO:Chief Executive OfficerやMD:Managing Director)

(2)  会社秘書役(CS:Company Secretary)

(3)  財務最高責任者(CFO:Chief Financial Officer)

(4)  常勤取締役(Whole-time Director)

(5)  支配人(Manager)など

本規定内容から判断すると、いずれかの管理職を一人でも設置しさえすれば問題ない、というのが今のところ有力な見解になっています。ちなみに、旧会社法において義務付けられていた払込資本額が5,000万ルピー以上の全ての会社に対する常勤の会社秘書役の雇用については新会社法においても上記“重要な管理職”の設置義務のある会社以外に対しては引き続き義務付けられることとなっており、また、払込資本額が5億ルピー以上、もしくは、売上高が25億ルピー以上の公開会社にはSecretarial Auditを義務付けられることになりました。

(2014年4月1日付で施行済)

 

(2)監査人に関する変更(新会社法:第139条)

旧会社法においては、監査人のローテーションの義務に関する規定が存在していない中で、これまではインド勅許会計士協会が発表している倫理規範上において、上場会社の場合には、監査人は7年でローテーション、その後、2年間のクーリングオフ期間が期待される旨の供述がありましたが、実務上、法的な強制力はありませんでした。しかしながら、2013年インド新会社において、監査人のローテーションが義務付けられています。そして、監査人の任期も1年から5年に延長されています(任期中の解任は可能)。つまり、新会社法施行後に新規で監査人を選任する場合には、個人の監査人の場合には5年、監査法人の場合には10年の任期を終えた後、その後5年間は同じ会社において監査人となることはできない旨の規定が定められています。なお、旧会社法の下において過去に選任してきた監査人を、新会社法施行後に初めて開催される年次株主総会において引き続き選任する場合には、下記のスケジュールに従う必要がありますので注意が必要です。

 

個人の監査人のケース                                                                                                                                               

新会社施行後初めての

年次株主総会開催時における

過去の同監査人の選任期間

同じ会社で監査人として

再び選任され得る最大任期

同じ会社で監査人になれる

合計最大任期

A+B

5年(もしくはそれ以上)

3年 8年(もしくはそれ以上)

4年

3年 7年
3年 3年

6年

2年 3年

5年

1年 4年

5年

 

監査法人のケース                                                                                                                                                       

新会社施行後初めての

年次株主総会開催時における

過去の同監査人の選任期間

同じ会社で監査人として再び選任され得る最大任期 同じ会社で監査人になれる合計最大任期

A+B

10年(もしくはそれ以上)

3年 13年(もしくはそれ以上)
9年 3年

12年

8年

3年 11年
7年 3年

10年

6年

4年 10年
5年 5年

10年

4年

6年 10年
3年 7年

10年

2年

8年 10年
1年 9年

10年

 

 

ちなみに、任期中に解任する場合には、株主総会において特別決議(4分の3以上の賛成)が要求される点には注意が必要です。(旧会社法においては普通決議(過半数の賛成)が必要)。また、新会社法の下において、監査人は会社が一定の措置を取らない限り、原則株主総会への参加が強制されることとなりましたが、株主総会は初年度のみ最初の会計年度末から9か月以内に行わなければならず(旧会社法下では会社設立後18か月以内)、また、開催場所も登録事務所の位置する市町村にて平日の9時から18時までに行わなければならないとしています(旧会社法下では株主全員の事前合意により場所・時間を自由に決定可)。

(2014年4月1日付で施行済)

 

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2013年インド新会社法の概要②「取締役」に関する改正

前回に引き続き、今回はインド新会社法の中でも「取締役」に関する改正点をご紹介します。

 

(1)居住者取締役(Resident Director)(新会社法:第149条)

2013年インド新会社法において、「全ての会社は、前年の1月1日から12月31日までにおいて182日以上居住している者を少なくとも1名取締役として選任しなければならない」と規定しています。旧会社法においても、取締役社長(Managing Director)や常勤取締役(Whole-time Director)、支配人(Manager)については、上記に類似する規定が存在したが、非公開会社は対象外であったこと、また、公開会社やみなし公開会社であったとしても、インド中央政府の承認を得れば当該役職にインド非居住者を選任できる、という逃げ道がありました。

しかしながら、新会社法の下においては、このような適用除外規定がないため、全ての会社が必ず1名の居住者取締役を選任する必要があり、Managing DirectorやWhole-time Director、Managerについてはインド居住者である必要があることとなります。既にインド進出済の日系企業で、インド居住者要件を満たす日本人駐在員が社内に存在する場合には、当該日本人駐在員の取締役としての在任期間を延長することによって、日本へ帰任後も駐在後任者がインド居住要件を満たすまでの一定期間をカバーすることが可能となります。一方で、インドへ100%独資で新規進出する場合には、社内の従業員がインド居住者要件を満たすのを待つか、もしくは、社外のインド居住者に取締役就任を依頼する等の対応が必要となります。

(2014年4月1日付で施行済)

 

(2)女性取締役(Woman Director)(新会社法:第149条)

2013年インド新会社法、及び、規則案において、「全ての上場会社、もしくは、上場会社以外の全ての公開会社のうち払込資本額が10億ルピー以上、または、売上高が30億ルピー以上の会社は、最低1名の女性取締役を選任しなければならない」旨を規定しています。上記に該当する会社は、施行後に次回開催される取締役会、又は、3か月後のいずれか遅い時期までに選任する必要がありますが、多くの日系企業は対象外であるものと思われます。

(2014年4月1日付で施行済)

 

(3)社外取締役(Independent Director)(新会社法:第149条)

2013年インド新会社法、及び、規則案において、「全ての上場会社、もしくは、上場会社以外の全ての公開会社のうち払込資本額が1億ルピー以上、売上高が10億ルピー以上、または、未弁済ローンや借入金、社債等の負債総額が5億ルピー超のいずれかに該当する会社は、取締役総数の3分の1以上の社外取締役を選任しなければならない」旨を規定しています。また、同条第6項において、社外取締役は、適切な知識や経験を有している者で、かつ、直近3会計期間中においてその親会社や子会社、関連会社の一定の役員または従業員ではない者、との規定があるため、親会社や関連会社の役員等を社外取締役に選任することができません。したがって、上記に該当する会社は、弁護士や会計士等の外部の専門家に社外取締役への就任を依頼する等の対応が必要となることが考えられます。また、施行後に次回開催される取締役会、又は、3か月後のいずれか遅い時期までに選任する必要があります

(2014年4月1日付で施行済)

 

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2013年インド新会社法の概要①「一人会社」と「みなし公開会社」、「非公開会社」

昨年から注目を浴びていたインド新会社法案ですが、2014年3月末に、同法案の多くが2014年4月1日付で正式に施行されることが発表されました。57年ぶりの大改正となったインド新会社法の概要についてご紹介したいと思います。

第一回は「一人会社」と「みなし公開会社」、「非公開会社」に関する変更点です。

 

(1)一人会社(One Person Company)(新会社法:第122条)

2013年インド新会社法において、株主が1名のみとする「一人会社(One Person Company)」の概念が新設されました。一定の文書には会社名に「One person company」の文言を入れる必要はありますが、一部財務諸表の提出義務の免除や定時株主総会の開催義務の免除など、一般の非公開会社と比較しても法令等遵守義務が軽減されています。

しかしながら、新会社法規則第2章第3条において、「インド国籍及び居住者の自然人」のみが一人会社を設立することができるとの記載があり、残念ながら日本人や日系企業にとっては一人会社を設立することができません。簡便な会社形態でのインド進出の可能性を期待していた日本人や日系企業にとっては期待外れの改正となりました。

 

(2)みなし公開会社(新会社法:第2条71項)

旧会社法において、「非公開会社ではない会社の子会社は、当該子会社が非公開会社であったとしても、本法の趣旨において公開会社とみなされなければならない」旨の規定がありました。つまり、日系企業がインドに子会社を設立する際に、親会社が公開会社である場合には、原則、その子会社は“みなし公開会社”に該当し、非公開会社と比較してより多くの法令順守を求められるというものです(合弁会社の場合は、必ず“みなし公開会社”に該当していました)。ただし、その子会社の株式の100%が外国株主により保有されている限りにおいては、当該子会社はみなし公開会社とはならない、との例外規定を利用することで、日系企業の多くはこれまでその子会社がみなし公開会社とならないような対策を取ってきました。(例えば、日本親会社が99%を、インド国外の関連会社や個人が1%の名義株式を保有)

しかしながら、2013年インド新会社法においては、同様の規定は存在する一方で、旧会社法との比較において“非公開会社ではない会社”にそもそも外国企業が含まれない、との解釈を取り得る規定内容となっています。つまり、例えば日系企業がインド企業との合弁会社を設立する場合、当該合弁会社がインド企業の子会社に該当し、かつ、そのインド企業が公開会社である場合を除いて、当該合弁会社は“みなし公開会社”に該当しないこととなるため、新会社法の下においては、日系企業はみなし公開会社の適用を回避しやすくなったことになります。

(3)非公開会社の要件(新会社法:第2条68項)

旧会社法において規定されていた非公開会社の要件として、以下のような内容を付属定款(Article of Association)に定めていること、という規定がありました。

(1)株主数2名以上50名以下、取締役2名以上

(2)株式譲渡制限あり

(3)株式・社債等の公募禁止

(4)株主・取締役等からの借入(デポジット)禁止

(5)資本金額10万ルピー以上

しかしながら、新会社法の下においては、株主及び取締役の2名以上という下限規定が排除され、かつ、株主数の上限が200名以下までに引上げられました。また、株主・取締役等からの借入(デポジット)についての禁止規定も排除されています。なお、旧会社法の下において、既に法人設立をしている日系企業は、付属定款を修正は必要ありません。

 

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