外資系企業にとってのインド小売業界の行方

by 田中啓介 / Keisuke Tanaka

タイやシンガポールに行けば伊勢丹がありますし、

台湾には阪急百貨店もあります。

でも、インドには日本の百貨店やコンビニさえ一切見かけません。

これはインド政府の外資規制によるものです。

 

(ちなみにインド・デリーには”Twenty Four Seven”というインド企業のコンビニがあるそうです。)

 

2012年の9月に“ある”閣議決定がなされるまでは

単一ブランドを取り扱う小売業のみ

一定の条件下で51%までのFDI(外国直接投資)が認められていました。

つまり、百貨店やコンビニ、スーパーといった

複数ブランドを取り扱う小売業は

インドに“直接的には”進出できない仕組みになっていたんです。

これはインドにある店舗の9割近くを占めると言われる

「キラナ」と呼ばれる小規模小売店(パパママストア)を保護するための規制で、

日本でショッピンモールやスーパーがたくさんできたことによって、

地域の商店街が軒並みシャッター街になってしまったことが

インドでも同様に起こりかねないことを危惧しての規制だと思われます。

 

ここで“直接的には“と書いたのは、

以下の方法で間接的にインドの小売市場に進出することが可能だからです。

(1)、フランチャイズ契約による進出

(2)、卸売業として進出

(3)、製造業および完全子会社(インド企業)として進出

例えば、米小売大手ウォルマート(Walmart)は、

インド財閥のバルティ・グループ(Bharti)と卸売会社を設立することでインドに進出していますし、

英小売大手テスコ(TESCO)も、

インド財閥のタタ・グループ(TATA)が運営する

スーパー「star bazzar」にのみ商品を提供する卸売業として進出しているようです。

そんなインドの小売業界にも少しずつ変化が訪れようとしています。

それは、複数ブランドを取り扱う小売業についても

一定の条件下で51%までFDI(外国直接投資)を認めることが

今年の9月に閣議決定されたんです。(上記画像リンク”Press Note No.5 (2012 series)”参照)

この一定の条件とは、例えば、

- 最低投資額は1億USD(約80億円)であること

- 投資額の50%以上は商品の製造、保管、物流などのインフラに使われなければならない

- 製品・加工品の30%以上が、工場・機械等への投資額100万USD以下の小規模企業から調達しなければならない

といった内容です。

最初は、この閣議決定の内容だけを見て、

「これはインドに大きな変化がおとずれるぞ!」と思ったんですが

この「一定の条件」をクリアできる企業は決して多くないように感じます。

また、昨日の日本経済新聞によると、

現在インド当局がウォルマートの出資を

外資直接投資規制に違反するとして調査しているという報道もあり

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGV19002_Z11C12A0000000/

まだまだ外資系企業にとっては前途多難なインド小売業界となりそうです。

とは言っても、

実は、昨年の7月にも同様の方向性が関係省庁会議において打ち出されましたが

地場産業からの強い反発があって撤回に追い込まれました。

だからこそ、今回の閣議決定はやはり大きな第一歩ですね

 

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