伝統的なアーユルヴェーダが残る南インド。医学の枠を超えて「生きること」そのものを伝える

by Mariko Hanaoka

世界最古とも言われるインドの伝統医学アーユルヴェーダ。

Mariko Hanaokaさん
Mariko Hanaokaさん
「生命の科学」とも言われるアーユルヴェーダを、約20年に渡って学び続ける日本人・田島恭子さんにお話を伺いつつ、アーユルヴェーダについて、そして伝統的な治療を続けるコインバトールの施設についてご紹介致します。

 

 

世界最古の伝統医学アーユルヴェーダ

アーユルヴェーダといえば、「ハーブオイルを使ったインド式リラクゼーションマッサージ」。

Mariko Hanaokaさん
Mariko Hanaokaさん
そんなイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。

しかし、アーユルヴェーダというのは、実は歴としたインドの”伝統医学”です。

世界の三大伝統医学といわれる

  • 中国医学
  • インド医学(アーユルヴェーダ)
  • ユナニー医学(ギリシャ・アラビア)

中でも、インド医学のアーユルヴェーダは世界最古の伝統医学で、「生命の科学」と言われています。

サンスクリット語の「アーユス(Ayus)=生命」と「ヴェーダ(Veda)=知識、学問、真理」を意味する言葉を語源としています。

 

 

ケーララ州とタミルナードゥ州で発展をとげたアーユルヴェーダ

アーユルヴェーダは、紀元前3000~500年頃、古代インドの賢者や聖者、哲学者、医学者たちが長年にわたって発展させていったと言われています。

Mariko Hanaokaさん
Mariko Hanaokaさん
中でも、多種多様なハーブや植物が育成して、自然環境にも恵まれた南インドのケーララ州やタミルナードゥ州で広く浸透していきました。

アーユルヴェーダ医学では、自然の持つ力を使って体のバランスを取り戻すことをとても重視しています。そのため、植物、ミネラル、動物由来の素材など、自然由来の材料を使った薬が処方されています。

また、タミルナードゥ州にはシッダ医学という、タミルナードゥ州の歴史と文化に深く根差した伝統医学もあります。

アーユルヴェーダ同様に紀元前から発展し、ハーブやマッサージを使った療法を行なっています。

ごうぞう
ごうぞう
アーユールベーダには、歴史があるんだぞう

 

 

20年にわたり学び続けるアーユルヴェーダセラピスト

日本では、1980年代からはじまったヨーガブーム。その中でヨーガとともにアーユルヴェーダも紹介されていきました。

そのため、ヨーガや瞑想にアーユルヴェーダを取り入れたプログラムが多く、アビヤンガやシロダーラ、スチーム浴など、日本では健康や美容のためのリラクゼーション療法としての印象が強いかもしれません。

Mariko Hanaokaさん
Mariko Hanaokaさん
そんな中、2005年から20年近くにわたって、南インドでアーユルヴェーダの学びを続ける田島恭子さん。ご自身の体調不良をきっかけにアーユルヴェーダと出会ったといいます。

(写真:田島恭子さん提供)

2007年、ケーララ州での研修を経て、インド政府機関BSS認定パンチャカルマセラピストディプロマを取得。

その後も、数々のアーユルヴェーダ施設、アシュラムなどを訪問し、BAMドクターコースの聴講や治療現場実習など、現地での学びを続けてきました。

※BAMS : 国家資格Bachelor of Ayurveda, Medicine and Surgery

ごうぞう
ごうぞう
ここからは、田島恭子さんへインタビューした内容を紹介していくぞう

 

 

古典のままのアーユルヴェーダが残る南インドで

Mariko Hanaokaさん
Mariko Hanaokaさん
現地のアーユルヴェーダセラピストが取得するBSS認定パンチャカルママッサージコースを日本人も受講できるように働きかけ、恭子さんはケーララ州カヌールの小さなアーユルヴェーダクリニックで、日本人向けの研修ツアーを始めました。

アーユルヴェーダサロンをオープンしたい人、アーユルヴェーダセラピストの仕事をしたい人を対象にしたこのツアーは、2007年からから2012年までの5年間続き、その後は、同じくケーララ州トリシュールにあるVAIDYARATHAMに研修の場所を移しました。

田島さん

南インドは、古典に記されたままのアーユルヴェーダや伝統習慣をそのまま受け継ぎ続けています。

他のエリアや国ではなかなか体験することができないアーユルヴェーダがここにはあります。

ですから、南インドで学ぶことにこだわりを持っています。




 

 

2023年8月、コインバトールAVPで研修ツアー開催

Mariko Hanaokaさん
Mariko Hanaokaさん
今年8月、恭子さんはコインバトールのArya Vaidya Pharmacy (Coimbatore) Limited (AVP)で初の研修ツアーを予定しています。
田島さん

今回の研修では、日本では体験できないアーユルヴェーダ教育法で、現地で受け継がれているアーユルヴェーダ療法や健康維持法などを学びます。

古典に基づいた伝統的なアーユルヴェーダを学ぶことで、新たな視点を得ることができます。

日本でアーユルヴェーダを伝えていきたい人たちが、これまでの問題や課題の糸口をつかむことができるような講座になると思っています

Mariko Hanaokaさん
Mariko Hanaokaさん
恭子さんのAVPとの出会いは2009年。仲の良かったアーユルヴェーダドクターがAVPの薬局で処方してくれたオイルとの出会いからでした。
田島さん

2012年以降に提携していたVaidyaratnamのスタッフにも元AVPの方が沢山いて、AVPはとても身近な存在でしたが、直接の繋がりはありませんでした。

写真:The Arya Vaidya Chikitsalayam & Research Institute – AVCRI Facbookより

Mariko Hanaokaさん
Mariko Hanaokaさん
2016年、はじめて訪れたコインバトールで、AVPのドクターが監修したアーユルヴェーダ施設に滞在した時の体験が素晴らしく、その後4回ほど日本のお客様を連れてリトリートを開催したといいます。
田島さん

このとき、AVPのフィロソフィー(哲学)に触れて感動し、いつかAVPの本拠地で滞在型の研修をしたいと、ずっと思っていました。

そして2020年に初めて直接コンタクトを取ることになります。

 

 

保守と先進がバランス良く混ざり合うコインバトール

AVPは1930年に設立されたインドの伝統的なアーユルヴェーダ医薬品メーカーで、長年にわたってアーユルヴェーダの研究、開発、製造、販売を行ってきました。

植物由来の原料を使用し、伝統的なアーユルヴェーダの製法と現代の最新技術を組み合わせた製品を製造しており、Arya Vaidya Chikitsalayam & Research Institute (AVCRI)では、専門医による診断と治療も提供しています。

Mariko Hanaokaさん
Mariko Hanaokaさん
現在日本でも、TIRAKITAのECサイトでAVPのオイルや蜜蝋バームなどを購入することができます。
ごうぞう
ごうぞう
わあ、日本でも購入できるぞう?

(TIRAKITA ECサイトより)

Mariko Hanaokaさん
Mariko Hanaokaさん
TIRAKITAにAVPを紹介し、コロナ後に一緒にコインバトールを訪れたのは恭子さんでした。
田島さん

コインバトールは、保守と先進のバランスがちょうどいい街だと思います。政治やビジネス意識の高い人も多いようにも感じます

また、“コインバトールといえば極上の朝ごはん”と、ケーララの人に言われるほど、美味しいご飯とコーヒーやお茶が楽しめます。

私は特に、コインバトールの郷土料理である雑穀料理が大好きで、この街でしか味わえない優しい味に癒されます。

 

写真:田島恭子さん提供

Mariko Hanaokaさん
Mariko Hanaokaさん
恭子さんは、自分たちの文化や伝統的なもの、信仰を大切にしながらも、より良い暮らしのためのチャレンジに真面目に取り組むコインバトールの人たちに惹かれているといいます。

 

 

生命の仕組みを知って自分の命に責任をもつこと

Mariko Hanaokaさん
Mariko Hanaokaさん
アーユルヴェーダは、深く追求すればするほど、それはただ目の前にある病を治す医学ではなく、生命体としての人が生きることそのものを深く知ることだといえます。
田島さん

アーユルヴェーダは単なる医学体系や知識ではありません。

『生きる』ことそのものに深い洞察力を持って、個人の人生を、社会全体を、どう豊かにしていくのかという問いを立てながら、あらゆるソリューションを明示しています

 

アーユルヴェーダを学ぶことは、生命の仕組みを知って自分の命(人生)に責任をもつことです。

そして、社会を健康的に豊かにしていくための土台づくりをするものです。アーユルヴェーダの源になるインドの信仰や文化、価値観から学べることは、現代日本人が抱えている多くの問題や困難に対する新ししい視点を得ることができると考えています

 

 

世界を違う視点から見ることができる場所

Mariko Hanaokaさん
Mariko Hanaokaさん
インドが世界の中で存在感を増していく中で、恭子さんは、インドの独自性を失わせることなく、彼らの素晴らしい価値観を世に伝えるお手伝いもしていきたいと考えています。

 

田島さん

私にとってインドは、世界を違う視点から見ることができるもう一つの眼であり、未来を照らす光です。

長い歴史を持ち、今でも脈々と受け継がれているものは、そこになにか普遍的ものが秘められているのだと思います。

Mariko Hanaokaさん
Mariko Hanaokaさん
現代の新しい価値観の中に残るインドの伝統的な奥深さを知るひとつの鍵が、私の住むこのコインバトールにも残っていることを気づかせてもらいました。

田島恭子さんのHP:アーユルヴェーダセラピストの教科書

ごうぞう
ごうぞう
インドのアーユールヴェーダやヨガに興味がある人は、こちらの記事もどうぞう!

コロナ禍のアーユルヴェーダ~薬と酒のあいだ~

ヨガ初心者がインドでヨガデビュー!〜シヴァナンダヨガ・ビギナーズコース体験記〜




0 comment

Related Articles