「二重課税の排除」と「脱税の防止」などを目的に
二国間で締結されているのが租税条約です。
日本とインドの間でも
日印租税条約が締結されていますが
インドに進出している日系企業は
インドから日本へ何らかの支払をする際に
この租税条約を考慮する必要があることは良く知られているところかと思います。
つまり、日本の親会社がPAN(納税者番号)を取得し、日印租税条約を適用することで
一定の支払時に控除すべきTDS(源泉所得税)の税率を軽減させることができます。
例えば、インド子会社から日本の親会社に対して
技術役務提供の対価としての報酬やロイヤリティ等を支払う場合、
通常25%のTDS(源泉所得税)を控除して残りの75%を日本へ支払うことになりますが、
日印租税条約を適用することによって税率が一律10%となり
残りの90%を日本へ支払うことができるようになります。
一方で、インド側で控除された10%のTDS部分については
日本側で外国税額控除として納税額から直接控除することが可能となります。
なお、日印租税条約を適用して税率が10%であっても、
日本側では25%の外国税額控除が適用できるとする「みなし外国税額控除制度」は
2006年における改正議定書において廃止されています。
しかし、ここでの注意点が2つあります。
まず一つ目は、日印租税条約を適用した場合に日本の親会社が
インドの税務当局に対して直接、別途申告書を提出する必要がある点です。
実際に、インドの税務当局から申告漏れの指摘を受けている企業も出てきています。
少額の取引だし、そこまで手間・費用をかけたくないという企業の本音もある中で、
この手間・費用を避けるためにあえて日印租税条約を適用しないケースや
そもそも日本の親会社の申告義務を知らなかったケースも散見されます。
そして、二つ目は、日印租税条約を適用しなかった場合に
インド側で控除された25%のTDS部分については
その全額25%を日本側で外国税額控除として納税額から控除できない点です。
これは「租税条約による限度税率超過税額」に関する規定として
租税条約による限度税率(この場合10%)を超える源泉税部分については
外国税額控除が認められないこととなっているからです。(法人税基本通達6-3-8)
取引価格の重要性に応じて、
日印租税条約を適用させるか否かを適宜判断するしかありませんが、
その判断を行う上で、上記2点を考慮する必要があることにご注意ください。