“ヒンディー語”の魅力~自分なりの学習で新たな言語に挑戦する~

by 橋口悠雅

1.はじめに


ナマステ!皆さんがヒンディー語の単語で最もイメージしやすいのはこの挨拶ではないでしょうか。正直な所、日本に住んでいるとヒンディー語に触れる機会はそれほど多くありません。

インド人を見かけることなら多少はありますが、彼らがヒンディー語を話しているかどうかは分かりません。しかし、そういった中、もし私たち日本人がヒンディー語で会話出来たらどうでしょうか。

当然、母国への関心を持ってくれているということは好印象なはずです。特に世界中で優秀なインド出身の人材が注目されている今、ヒンディー語を話せるというステータスは希少価値が高く、今後グローバルなキャリアを考える上でも重宝されるかもしれません。

キッカケは何にしろ、世界一人口が多い国で最も話されている言語を覚えることは私たちの人生の可能性を広げてくれることでしょう。

この記事では、ヒンディー語の基本情報と学習方法について筆者である私の考えを基にまとめています。今後、重要度が増してくるヒンディー語に触れておくことで、読者の皆さんが将来の選択肢を増やす良い機会になれば光栄です。

2.ヒンディー語の基本情報


ヒンディー語とは英語と同じく、インドにおける公用語として憲法上認められた、中央政府も公式に使用している言語です。

特に、北インドの諸州(デリー、ウッタル、プラデーシュ、ビハール、ラジャスタン、ハリヤーナ)で話されることが多く、ムンバイ発祥のボリウッド映画はヒンディー語で制作され、全国及び国際的に広く視聴されています。

(*1):ヒンディー語が話される地域

(*2):様々なボリウッド映画

起源となる言語は、古代インドで主に学問的な文献の執筆に使われていたサンスクリット語で、この言語は当時インド亜大陸に移住してきたアーリア人によってもたらされました。

しかし、学問や宗教文学に使用されていたサンスクリット語は一般の人々が習得するには少し複雑すぎたため、サンスクリット語→プラークロット語→ヒンディー語と徐々使用しやすい形に変わっていったと伝えられています。

しかし、ここで忘れていけないことが1つあります。それは、インド国内の各州では憲法に基づき、英語やヒンディー語だけでなく様々な言語を公用語として採用しているということです。

例えば、カルナータカ州ではカンナダ語が、マハーラーシュトラ州ではマラーティー語が、タミル・ナードゥ州ではタミル語が、それぞれの公用語となっています。

地域ごとに独自の宗教と言語が存在するインドでは、異なる文化的背景を持つ人々が共存しており、例えメジャーな言語がヒンディー語だったとしても、多様性を認め合う気持ちが大切ということは覚えておく必要があります。

3.ヒンディー語の様々な方言


地域による方言も非常に多く、インド国内で公式に認められている方言が48個もあります。これらは地理的な要素や文化的な特性が強く影響しており、それぞれの方言が独自の言語体系を創ってきました。

ヒンディー語話者の数自体、およそ6億人以上と非常に多く、特に話されている主要な方言を挙げるとなると以下のような地域別の言語があります。

・ウルドゥー語(Urdu)

ウルドゥー語は、ヒンディー語の要素を強く含みますが、他にもペルシャ語、アラビア語、トルコ語などから多くの語彙を取り入れたナスフと呼ばれる特有の文字を使用している言語です。主に北インドやパキスタンで話され、多くの著名な詩人が文学、詩、音楽、映画などで広く活用しています。

・ブラージ・バジャ語(Braj Bhasha)

ブラージ・バシャ語は、北インドのブラージ地域で話される言語で、ヒンディー語に密接に関連しています。中世のヒンディー語文学において、サント(聖人)たちによって使用され、バラモン教の宗教的な文学にも影響を与えました。バラモン教は、インドの古代宗教の1つで、詩、宗教的な儀式、哲学的な教えが含まれたヴェーダと呼ばれる聖典に基づいています。

・アワディー語(Awadhi)

アワディー語は、アワド地域で話されるヒンディー語の方言で、特に16世紀の詩人トゥルシダースが書いた『ラーマチャリトマナス』という叙事詩が有名です。これは、ヒンデュー教の神、ラーマ王子に関わる物語を題材にしており、アワディー語文学が、中世インドにおいては重要な位置を占めていたことが分かります。

・ビホージプリ語(Bhojpuri)

ビホージプリ語は、主にビハール州やウッタル・プラデーシュ州で話されている言語で、地域の文化や歴史の影響を受けながら発展しました。口承文学や詩、歌などの伝統が根付いており、映画や音楽などで地域的な人気があります。方言にわずかな差異はありますが、基本的にはヒンディー語の言語体系と同じと考えて良いでしょう。(*3)

4.ヒンディー語を扱えるようになる


国内だけで数十の方言が存在している現状を見ると、やはりインドという国の大きさと歴史の長さを感じることが出来ます。では、実際に私たちが簡単なヒンディー語を習得するにはどのような方法があるのでしょうか。

全くヒンディー語に触れてこなかった私たち日本人からすると、「結構、難かしそうだなぁ」と考えてしまうのは当然のことです。しかし、どの言語も同じですが毎日少しずつ使える言葉を増やして、慣れるまで学習を続けてさえいればある程度のレベルまで言語を習得することは可能です。

しかし、学びたいけど勉強の仕方が分からないという人もいると思います。そういった人は、以下で紹介している筆者自己流の学習方法を参考にして頂いて、学習を進めてみてください。かなり効率は良い方だと思うので、一人で文法や発音の教科書と睨めっこするよりかは役に立つはずです。

(1)ヒンディー語の基本ルールを覚える

ヒンディー語の文字はデーヴァナーガリー文字と呼ばれ、左から右に日本語と同じように書かれていきます。もちろん読み順も左から右と同様で、一般的な文章であれば母音と子音の組み合わせにより形成されているものがほとんどです。

初学者の場合は母音字と子音字を優先して学習し、その他のルールについては文法学習や読解で触れた際に確認して覚えていくのが良いでしょう。

以下は、テーヴァナーガリー文字について11の母音字と33の子音字をまとめた表です。

(*4):デーヴァナーガリー文字の表

平仮名だと母音字の数はたったの5つですが、その倍以上あるのは面白い点ですね。母音字の長短で言葉の意味も変わるとなると、慣れるまではかなり時間がかかりそうです。

(2)実際に書いてみよう!

簡単なルールを理解したら、とりあえず表にあるデーヴァナーガリー文字を使って何か文章を作ってみましょう。何を書くかは皆さんの自由です。

私は自己紹介が出来るようになりたいので、「私の名前は~です」という文章を書いてみます。Google翻訳を使って、ヒンディー語の綴りはどう書くのか検索しましょう。

初めてにしては上出来の文字ではないでしょうか。実際に書いてみると、執筆自体はそれほど難しいことではないと思いました。一緒に暮らしているインド人の友達に見てもらったところ、比較的上手だと褒めてもらえたので、自信をもってヒンディー語が書けると言えます。

(3)文章の構成を理解する

そして、次に先ほど書いた「मेरा नाम ~ है」というヒンディー語がどのような構成で組み立てられているのか理解するため、最近話題のChatGPTに質問してみます。

正直な所、綴りを真似して書くだけでは、文章の成り立ちを理解できていないので、次に活かすという部分が十分ではありません。

このようにAIが解説してくれた内容を読むことで、母音字と子音字の組み合わせが初めて理解でき、新たに子音+母音+子音という形式があることも発見できます。

(4)発音して使ってみる!

新しい文法や単語を一つの文章から身に着けた皆さんが次にすることは、実際に使ってみるということです。言語というものは、人とのコミュニケーションが出来てやっとその真価が表れます。覚えた言語はすぐに口に出すようにしましょう。

現在、私はインド人の友達がいるので、少しずつヒンディー語の会話を増やしていくことにしました。他にも、インド人の方に日本語を教える機会があるので、その中でチャットを通じてヒンディー語を教わっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チャットによる会話であれば、録音の聞き直しや翻訳機能による発音矯正も容易いので、初学者の方がスピーキングを学びたい際には非常におススメです。

そして、もし気軽に連絡を取り合えるインド人の友達がいないという人は、最近出てきている会話型AIやSNSを使った友達検索をしてみるのが良いかもしれません。近所のインド料理屋さんの店主にも声を掛けてみるのも良いでしょう。

5.まとめ


私が現在住んでいるインドのバンガロールという地域は、南インドの内陸部なので一般的にはカンナダ語と言われる別の言語が話されます。渡航する前も、ヒンディー語を学ぶ機会はあまり無いかなと思っていました。

しかし、実際はバンガロールでもヒンディー語で話している人々は大勢いて、体感だけなら6割ぐらいの人々が簡単なヒンディー語は話すといったイメージです。

もちろん他の言語で話している人も相当いるのですが、彼らとのコミュニケーションでヒンディー語を話せたらどれだけ楽しいのだろうかと考えることは多々あります。

それは、日々の生活に限った話ではなく、ビジネスでも政治でも、自国の言葉を使って話してくれる人が好まれるのは変わりません。もう少し距離を縮めたいという時に、言語というツールを使ってグッと懐に入るのはとても良い手段だと思います。

学習の難易度がテクノロジーの進化で容易になってきている今、英語に続く第三言語としてヒンディー語を学ぶ選択は、皆さんにとって価値のある挑戦ではないでしょうか。

※本記事の参考サイト一覧

(*1) Discovering the Diversity of Languages Worldwide — Fluency (thefluency.app)

(*2) Inspiring Bollywood Movies, Every Entrepreneur Should Watch (insightssuccess.in)

(*3)Dialects Of Hindi Spoken In India | Superprof

(*4)ヒンディー語はどんな文字?デーヴァナーガリー文字を覚えよう! – Mayo (indiamylover.com)

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