「インドだから、ヒンディー語を話してるんでしょ?」と思うかもしれませんが、インドはそんなに単純ではありません。
デリーからチェンナイへの出張で起きたインド多言語の「珍事件」
ある日、日本人上司Aさん(英語ペラペラ、ヒンディー語は話せない)が、南インドのチェンナイに出張しました。
私たちがデリーのオフィスで働いていたときに、Aさんからインド人上司へ電話が。 「今チェンナイ空港に着いたんだけど、タクシーのドライバーは英語ができないから通訳してほしい」とインド人上司に頼むAさん。 ドライバーに携帯を渡し、インド人上司としばらく会話。ところが、インド人上司から帰って来た答えは…… 「このドライバーはヒンディー語もわからないので、僕も会話できません」 |
多言語の国インドには2,000以上の言葉が存在する
なぜ、こんなことが起こったのでしょうか?
インドの公用語はヒンディー語で、英語が準公用語となっています。ヒンディー語が公用語となってはいるものの、主に北インドで話される言語であり、チェンナイなどの南インドでは通じません(ヒンディー語を「学んでいる」人もいるので、中には通じる人もいます)。
公用語以外に22の指定言語があり、チェンナイのタミル語やバンガロールのカンナダ語、ハイデラバードのテルグ語、そしてケララのマラヤラム語などがあります。さらに、指定言語に認定されていない地域ごとの言語が約2,000あると言われており、インドは多くの言語が存在する国なのです。
では、準公用語の英語は、インドでどのくらい話されているのでしょうか?
少なく感じるかもしれませんが、インドの人口は13億6,600万人なので、約1億3,600万人の人が英語を話すことになります。
高等教育を受けたインド人はみんな英語を話すので、ビジネスシーンではほとんど英語が通じます。
北インドでは広範囲でヒンディー語が話され、実際の公用語として機能しています。しかし、南インドでは州ごとに言語が異なることから、英語が準公用語として活用されている印象です。特にケララ州は教育水準が高く、英語話者が多い州としても有名です。
このようにインドは多言語社会なので、インド人同士でも言葉が通じないという事態があるのです。
南北インドの恋愛を描いた映画「2 STATES」
南北インドの特徴を理解するのに、おすすめの映画が「2 STATES」です。
北インド・パンジャーブ出身の主人公(アルジュン・カプール)と南インド出身の彼女(アリア・バット)の恋愛を描いています。 |
インドで「結婚」とは家同士が深く関わる一大事。家族が結婚相手を選ぶ「お見合い結婚」が主流でしたが、最近では少しずつ恋愛結婚も増えています。
この映画では、北と南出身の2人が家族も巻き込みながら、恋愛、結婚までをコメディータッチに描いています。
インドの多言語を感じた「カッチの女性」
伝統工芸品で有名なまち、グジャラート州のカッチ地方を訪れたときです。
現地の美しい刺繍に魅了された私は、現地ガイドに「刺繍を習いたい」と頼み、小さな村を訪れ1日刺繍を教えてもらいました。 そのガイドは「夕方迎えに来る」と言って、私は1人村に残りました。 村の女性に刺繍を教えてもらったのですが、この方が英語はもちろんヒンディー語も、州の言語であるグジャラート語もわからない人だったのです。 この女性が話すのは地域の言葉であるカッチ語だけ。 刺繍は見て、真似する、という方法で学ぶしかありませんでした。 |
都市部のビジネスシーンではほとんど英語が通じるのに対し、田舎では現地の言葉しか話せない人もいるインド。
多言語の国インドを理解しよう
インドは国土が広く、人口も多い国ですが、言語の面からもインドの広さを感じられます。
地域が違えば、言葉も食べるものも習慣も違うなんて、外国のようですよね。
この記事を読んで、少しでも「インドっておもしろいな」と思っていただけたら幸いです!