なぜインド人は日本での生活・仕事に関心が低いのか?

by 田中啓介 / Keisuke Tanaka

一般的に、インド国内で日本語を勉強しているインド人の比率は極めて低い状態です。私がインドで生活をしていて、日本で働きたいというインド人の声もほとんど聞かないように感じます。インド人は、母国語(準公用語)として英語を当たり前のように話し、優秀であれば欧米系の企業から高給でオファーが得られます。食生活では、ベジタリアンが多く、しっかりと加熱・調理をしてスパイスを中心に刺激的な濃い味を好みます。一方で、日本人の多くは英語が通じず、肉や魚・卵を生で食し、どんな料理にもかつおだしやチキンスープが使われ、そして、インドと比べると素材の味を生かした薄味ベース。そんなインドとはまるで違う日本で生活をするというのは、インド人にとって簡単なことではありません。さらに、(欧米企業と比較して)給料も決して高くない日本企業で働くことを魅力的だと感じるインド人が少ないのも、ある意味当然なのかもしれません。

 

とは言っても、人口大国インドにおいて、日本語を学んでいるインド人の絶対数を見るとそれなりに多くいることも事実です。事実、毎年開催されている「日本語の夕べ」というAOTS(海外技術者研修協会)主催のイベントでは、日本語を流暢に話す100人近くのインド人が集まって、日本語で俳句を読み上げるインド人女性や日本語で漫才をするインド人男性グループがいて、ビックリしたのを覚えています。

 

「日本企業から技術を学びたい」

「アニメやマンガなどの日本文化をもっと知りたい」

 

そんな希望を持って勉強をスタートさせるインド人が、日本企業で働いたり、日本で生活をしたりしたときに、日本企業で働けて本当によかった!日本に来てよかった!と、そう思ってもらえる国にしていきたいですね。JETROが2020年に実施した「在日インド高度人材に関する日本での就業に対する意識や現状調査」では、日本での中長期的な就業に対してインド人の63%が「継続したい」と希望していて、(1)気候と安全性を含む日本の住みやすさ、(2)日本文化、(3)日本企業の技術力の3つが日本企業での就業理由トップ3になっています。一方で、上司からの「評価フィードバックが曖昧」という点には過半数のインド人が不満に感じているとのこと。

また、日本企業の駐在員と話をしていると、どこかインド人を下に見ている人も少なくないような気がしています。我々日本人の「英語力の低さ」や「不明確な指示」、「不十分な説明やフォローアップ」が起因して招いている様々な誤解や仕事の非効率を、インド人のせいにしてしまう駐在員も比較的多いように感じています。人の振り見て我が振り直せ。まずは自身が得ている給料が、インド人のそれと比して本当に正当だと自信を持って言えるかどうか、謙虚に、客観的に、自己評価しておきたいところです。

(参照元:日本語能力試験JLPTホームページ

さて、日本語能力のレベルを評価する基準として『JLPT』という世界標準の日本語能力試験が利用されています。この試験はN1~N5という5つのレベルに分けられていて、“N1”および”N2”合格者が日本語通訳者として仕事ができるレベルです。チェンナイで日本語教師をしている方の話によると、チェンナイの人が感じる代表的な「日本語が難しいところ」は、

 

  • 句読点以外に文字の区切れがなくて分かりにくい
  • ひらがなや発音は覚えやすいが、カタカナは角ばっているので覚えにくい
  • ひらがな、カタカナ、漢字が3つあるのが難しい
  • ひとつの漢字に複数の読み方があるのが難しい

 

といった感じだそうです。そういえばタミル語もひらがなのように丸まっている文字を使うので、ひらがなは覚えやすいのかもしれませんね。

 

当ポータルサイト運営会社であるGlobal Japan AAP Consulting社では、インド人従業員に無料で日本語研修を受けられる制度を設置していますが、まだ一部の社員がN4レベルに到達するのがやっと、という状態です。日本にもっと興味を持ってもらえるように、日本への出張研修や異文化理解を深める研修なども含めてぜひ積極的に企画していきたいな、と考えています。

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