昨日2014年10月10日(金)
ムンバイ高等裁判所にてある判決が言い渡されました。
Vodafoneのインド子会社が発行した株式を巡って
長くに渡って争われてきた移転価格に関する税務訴訟です。
簡単に争点を説明すると、
親会社に対してプレミアム発行を行った株式が
(※1株当たり額面10ルピー、プレミアム8,500ルピーとして発行)
親会社に対する不当に安い価格での株式譲渡に当たるとして
インド税務当局が主張する株価(※1株当たり53,775ルピー)との差額に対して
総額で約540億円もの課税をVodafoneに対して主張しており、
Vodafoneはこの多額の課税処分の取り消しを求めていました。
その結果、昨日Vodafoneが見事に勝訴を勝ち取ったようです。
Vodafone以外にも、シェル石油や香港上海銀行(HSBC)など多くの関連会社が
同様の移転価格に関する税務訴訟のまさに係争中であり、
今回の判決はVodafoneだけでなく、その他の企業、そして、今後の投資家に対して
インド市場への投資を促進する上で意味のあるポジティブな判決となったと言えます。
(※なお、インド税務当局が最高裁へ上告する可能性はまだ残されています。)
(※上図は分かりやすくするために簡略化しています。)
さて、ボーダフォンと言えば
「ボーダフォン事件」というインドで有名なもう一つの訴訟案件があります。
2007年にVodafoneのオランダ法人が、
インド法人に対して支配権を持つ国外の中間持株会社の株式を取得することによって、
間接的にインド法人の支配権を取得して租税回避行為を行ったとして、
インド国内におけるその課税関係が争われたものです。
このような間接的に持株会社を買収する節税スキームは一般的ではありますが
2010年9月にムンバイ高等裁判所は、Vodafone側の異議申し立てを却下し、
インド税務当局の主張を認める判決が下されてしまいました。
当然にVodafoneのみならず、海外投資家までもこの判決には驚きを隠せませんでした。
この判決の結果、Vodafoneに対しては約26億ドルもの課税処分が行われましたが、
Vodafoneは判決結果に不服であるとしてインド最高裁判所に上訴し、
その2年後の2012年1月に最高裁による判決で、
ようやくVodafone側の異議を認める逆転勝訴判決を勝ち取りました。
ところが「ボーダフォン事件」と言われる所以になった事態が起きます。
なんと2012年5月に、インド政府は間接的な買収に対しても課税できる税制改正を行い、
しかも、その税制改正について遡及的に適用できる旨のルールを定めました。
つまり、インド最高裁で「課税されない」という判決が出されたにもかかわらず
税制改正によって「課税できる」ことになり、税務訴訟は白紙に戻ったことになります。
現在もこの訴訟は係争中で、多くの投資家がその行方を見守っている状態です。
なお、インド・モーリシャス租税条約やインド・シンガポール租税条約には
両国の法人が中間持株会社としてインド法人株式を保有し、譲渡した場合には、
その譲渡によって生じるキャピタルゲインはインド国内で課税されない旨を規定しており、
多くの投資家が節税目的でこの両国をインド投資の経由地として利用しています。
(※Source : インド商工省DIPP(Department of Industrial Policy & Promotion)のHP)
実際、インド商工省のDIPP(Department of Industrial Policy & Promotion)によると
過去15年間のインドへの投資総額ランキングの上位2か国が
1位:モーリシャス(全体の37%)と2位:シンガポール(同11%)となっています。
ちなみに3位はイギリス(同10%)、4位が日本(同7%)、5位がアメリカ(同6%)です。
モーリシャスやシンガポールからの投資は、あくまで“経由地”としての投資がほとんどなので、
実質的にはイギリス企業、日本企業、アメリカ企業の貢献度が大きいことになります。
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