最終回である今回は、「休眠会社」及び「会社の再生」に関する改正点についてご紹介します。
(1)休眠会社(Dormant Company)に関する変更(新会社法:第455条)
旧会社法では「休眠会社」に関して明確な定義はありませんでしたが、2013年インド新会社法において、ある一定の要件を満たす場合に「休眠会社」の認定を受けることが可能となりました。「休眠会社」になりますと、一定の費用の支払を求められますが、取締役会の開催が半期に一度へ軽減され(ただし、開催後90日以上の空白期間は必要)、キャッシュフロー計算書の提出義務の免除等のコンプライアンスが緩和されます。以下のような会社は「休眠会社」として申請することが可能です。
① 将来の事業及び資産管理目的で設立され、重要な会計取引を行っていない会社
② 設立後、一切の事業や業務を行っていない会社
③ 直近2年間で重要な会計取引を行っていない会社
④ 直近2年間で財務諸表や年次報告書を提出していない会社
なお、「重要な会計取引(significant accounting transaction)」とは、株式の割り当て等の会社法に準拠するための費用や、事務所や書類を維持・保管するための支払等を除く全ての取引であると規定されており、一般的に発生し得る通常の取引は、原則、重要な会計取引に該当する点には留意が必要です。
(2014年4月1日付で施行済)
(2)会社の再生及びSick Companyに関する変更(新会社法:第19章)
「Sick Company」とは、法律で規定された一定の要件を満たす、財務上不健全な会社のことを指し、これに該当する会社は、法律の規定に従って、会社の再生や再建、清算を強制されることとなります。
さて、Sick Companyについては、当初The Sick Industrial Companies (Special Provisions) Acts, 1985(SICA 1985)によって規定されていましたが、同法に基づく再生・再建手続きには莫大な時間がかかってしまうと同時に、結果的に債権者の不利益となってしまうケースもあることから、同法改正の必要性が叫ばれていました。このような経緯の中で、今回、2013年インド新会社法の第19章(第253条~269条)にSick Companyに関する条項を新たに規定することになりました。
SICA 1985と2013年インド新会社法におけるSick Companyの主な相違点は、(1)対象となる会社、(2)該当基準、(3)監督機関、(4)手続き、の4点で、具体的な相違点については以下のとおりです。なお、SICA 1985において規定されていたPotentially Sick Companyの概念は撤廃されました。
(未施行)
SICA 1985
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新会社法
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(1)対象会社 | 工場を有する製造業の会社(Industrial Companies)で、設立登記後5年以上経過している会社 | すべての会社 |
(2)該当基準 | 債務超過かどうか(会計年度末の累積損失が純資産額を超過しているかどうか) | 未払債務額の50%以上を有する担保債権者からの請求に対して、会社が請求通知送達後30日以内に弁済できない場合、または、
当該担保債権者を合理的に満足させる支払保証もしくは和解ができない場合 |
(3)監督機関 | BIFR(The Board for Industrial and Finance Reconstruction)
再生・再建スキーム等の作成命令や監視、清算命令等の権限 |
NCLT(The National Company Law Tribunal)
BIRFと同様に一定の権限を有するが、担保債権者の意思が尊重される点においてその権限は限定的 |
(4)手続き | 該当する会社はBIRFへ申告
BIFRが経営再建への猶予期間、再生スキームの提案・実施、清算命令等を実施 |
会社もしくは担保債権者がNCLTへ申告
担保債権者が再生スキームの提案権を有する 再生及び清算の意思決定は一般債権者を含む債権者集会に委ねられる |
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