インドの各地を訪れてみると、さまざまな宗教の寺院があったりと、多様な文化が共存しているのを感じることができます。
実際、インドには121言語と270の母語があると言われています。(2011年インド国勢調査より)
今回は、そんなインドで使われている言語や公用語であるヒンディー語の歴史についてご紹介します。
インドの言語について
インドはとても大きな国なのもあり、地域によって文化や生活・食べ物などが異なります。
その1つに「言語」があり、インド=ヒンディー語と思われることも多いのですが、実は地域によって話されている言語は異なります。
南インド地方では「タミル語」や「テルグ語」が使われていますが、これは南インドの先住民である「ドラヴィダ民族」の方々が作り上げた言語でドラヴィダ語族に分類されます。
その一方で北インド地方では「ヒンディー語」や「ウルドゥー語」が使われています。
これは、先祖にあたる「サンスクリット語」がインドやヨーロッパの祖語に起源を持つため、インド・ヨーロッパ語族に分類されます。
また、北インドの言語には中央アジアや中東からきた「イスラム文化」が取り込まれたことから「アラビア語」や「ペルシア語」の影響も強く見られます。
これらのことから同じ国内でも異なる文字や言語が使われるインドですが、実は両言語の中には一部共通している語彙があったりもするので、長い歴史の中でお互いに影響を及ぼしてきたことがわかったりもします。
インドの公用語「ヒンディー語」
ここまで北と南で言語が異なることを書いてきましたが、そんなインドの公用語は「ヒンディー語」と「英語」が連邦公用語として制定されています。
インド憲法は、連邦政府の公的共通語として、ヒンディー語と英語の二つの言語の使用を規定している。連邦憲法はさらに第8附則において22の指定言語を定めているが、その公的な位置づけについては曖昧な部分が多い。
引用:インドの公用語 > 概要
上からもわかるとおり、インド憲法には「22の言語がインドの諸言語」として記載されていますが、これは「公用語」ではなく、あくまで「インドでの言語の存在と存続を保証しているのみ」となります。
よって、公的な権威や効力については曖昧であるということになります。
市民の生活で使われる州公用語
州公用語とは、インドを構成している各州で制定されている公用語です。
インドでは「連邦制」を採用しているため、各州の政府は地方行政・教育などの決定権限に加え、州公用語を決める権限も持っています。
ここで決められた言語が市民の生活で使われたり、州レベルの公的な場などで使用されています。
州公用語には次のようなものがあります。(一例)
言語 | 公用語として使われている州 |
ヒンディー語・英語 | インド全土(連邦公用語) |
タミル語 | タミル・ナードゥ州 |
テルグ語 | アーンドラ・プラデーシュ州 |
グジャラート語 | グジャラート州 |
マラヤーラム語 | ケーララ州 など |
カンナダ語 | カルナータカ州 |
パンジャーブ語 | パンジャーブ州 |
ルピー紙幣に書かれているさまざまな言語
インドではインドルピーが使われていますが、よく見てみるとさまざまな言語が書かれているのがわかります。
まず、表面上部には「ヒンディー語」、裏面上部には「英語」という2つの連邦公用語が大きく書かれています。
加えて、裏面には15の言語(22の指定言語に含まれるもの)でヒンディー語・英語同様に金額が書かれています。
実はインドの言葉が由来の日本語
日本人にはあまり馴染みのないインドの言葉ですが、実は日本語の中にもインドに起源を持つ言葉があります。
今回は2つご紹介します。
パジャマ
- ヒンディー語(पैजामा):男性用ズボン
- 英語(pyjama ※イギリス英語):寝巻き
日本で寝巻きという意味を持つ「パジャマ」。実はヒンディー語由来の単語です。
元々は寝巻きという意味ではなく、男性がクルタと一緒に合わせて履くゆったりとしたズボンを指した言葉でした。
このズボンをイギリス人が寝巻きとして利用をしたことでやがて世界中に広まっていきました。
シャンプー
- ヒンディー語(चाँपो):押す・揉む・マッサージする
- 英語(shampoo):髪の毛を洗う
シャンプーも実はヒンディー語由来です。
語源である「चाँपो(チャァンポ)」は、押すや揉むという意味の動詞「चाँपना(チャァンパナー)」の命令形です。
イギリス人がインド人の使用人に「頭皮のマッサージ」をお願いした際に使われた言葉がそのままイギリスに広まり定着したことが始まりだそうです。
実は日本語由来のヒンディー語「リキシャー」
インドではお馴染みの「オートリキシャー」。
この「रिक्शा」という言葉は日本語の「人力車」が由来です。
明治時代に移動手段として使われた人力車がインドを含む各国に輸出され、この時に言葉も伝わったそうです。
その後、インドで進化を遂げた人力車(リキシャー)は、自転車タイプの「サイクルリキシャー」とエンジンタイプの「オートリキシャー」として今も使われる乗り物となりました。
ヒンディー語簡単フレーズ集
最後に、旅行のときなどに使える便利フレーズをご紹介します。
※ヒンディー語の文字や書き方については紹介していないので、以前の記事をチェックしてみてください!
ヒンディー語 | 読み方 | 意味 |
नमस्ते । | ナマステ | こんにちは こんばんは おはようございます さようなら |
धन्यवाद । | ダンニャワード | ありがとう |
मेरा नाम ○○ है । | メーラー ナーム ○○ ヘ | わたしの名前は○○です |
आपका नाम क्या है ? | アープカー ナーム キャー ヘ | あなたの名前はなんですか? |
ठीक है । | ティーク へ / ティケ | OK |
फिर मिलेंगे । | フィル ミレンゲー | またね |
おわりに
インドで使われている言語や。公用語であるヒンディー語についてご紹介しました。
日本にも方言というものはありますが、地域によってまったく異なる言語や文字が使われているというのは面白いですよね。
わたしもインドで生活するまでは「インド=ヒンディー語」というイメージしかなかったので、南インドに旅行に行った際に、看板などに書かれている文字がデーヴァナーガリー文字(※ヒンディー語で使われる文字)とはまったく違ってびっくりしました!