(写真:弊社従業員みんなでZoom。やはり顔を合わせるのは大切ですね。)

久しぶりのブログ投稿です。自分史に残る選択をすることになるので記録に残しておこうと思います。昨日2020年4月7日、チェンナイ日本商工会より、ANAがチェンナイー成田臨時便運航についてインド当局から承認を取得したと連絡がありました。国内線・国際線ともに発着を制限しているインドにおいて、この臨時チャーター便を飛ばすことに多くの関係者が多大な努力をしてくれたであろうことは容易に想像できるし、インド全土でロックダウン(完全封鎖)中である状況において、在チェンナイの日本人のために日本に帰国できるという選択肢をつくってくれたことがとにかくありがたく、すげーなと思い感動しています。

多くの日本人駐在員には、日本本社から帰国指示が出ていることは友人などを通じて多々聞いていたけど、直近に同じくチェンナイ日本商工会が実施したアンケート調査でも以下のような結果になっています。

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 回答社数:108社(回答率:55%)※注1)

①回答企業の日本人社員数(合計):421名
②回答企業の日本人社員の同行家族数(合計):218名
③(上記①、②)合計数:639名 ※注2)
④既に一時帰国済みの人数(合計):111名(④/③:17.4%)
⑤今後臨時便等で一時帰国予定の人数(合計):328名(⑤/③:51.3%)
⑥日本に帰国せず引き続きインド滞在予定人数(合計):195名(⑥/③:30.5%)

 ※注1)今回の調査範囲が「タミルナド州に居住する日本人社員および帯同家族」であるのに対し、チェンナイ 日本商工会会員企業様の中には、チェンナイ以外に立地する企業様も含まれているため回答できなか った企業様もいると考えられます。<\small>

 ※注2)上記③の合計数639名に対し、④+⑤+⑥=634名とバランスしませんが、これは企業様からのご回答のうち、数社分のご回答について、上記バランスしない回答があったために発生しています。そのため、④、⑤、⑥の割合(%)合計も99.2%となっています。

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私の肌感覚でも私の友人のほとんどに帰国指示が出ている状況です。幸か不幸か、自ら起業してインドにいる自分に対して誰からも帰国指示が出るわけはなく、自分で状況を見て判断することになりますが、私の場合はチェンナイに残ることを選択しました。

この判断はとても難しくて、個人の判断基準や価値観、ご家族の有無によってどちらの選択肢を取るかが大きく変わってくるのでどっちが正しいということは一切なく、人命にかかわる事態であることを前提にすると、企業の判断や指示というよりは、各個人にある程度自由な選択肢が与えられ、かつ、本人の判断基準に基づく希望が何より尊重されるべきであると感じています。したがって、弊社には日本を出向元とする日本人駐在員はいませんが、現地採用の日本人従業員が3名おり、もしご本人が帰国を希望する場合には当面日本での在宅勤務を前提に、渡航費や隔離期間中のホテル代等の費用負担も含めて会社として支援する旨を伝えました。

さて、私がチェンナイに残ることを選択した理由について少し説明しておこうと思います。というのも、チェンナイの状況は日本では報道されておらず、そして、私のことを心配してくれる方々がいるかもしれないので、あくまでそんな方々に向けて多少なりとも安心してもらうために書いておきたいというのが主旨です。これから日本がどうなるか、インドがどうなるか、東京や大阪、チェンナイがどうなるかは誰にも分かりませんが、例えば、今までの東京とチェンナイのCOVID-19に関した経緯や政府の動き、感染者数やその推移、街の雰囲気や個人の危機管理意識を比較しても、チェンナイに残ることが危ないという状況ではないよ、ということをちゃんと伝えておきたいと思います。

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写真:チェンナイ軟禁生活中の我が家の定番メニュー(ナッツやドライフルーツ入りヨーグルトとサンドイッチ)

1.自宅での食事やその他生活

インド全土で2020年3月25からスタートした21日間のロックダウンにともなって、完全に在宅生活となり、必要のない限りは一切の外出をしない生活を続けています。一時は州によってデリバリー不可などの報道もありましたが、今は買い物やデリバリーは時間限定でもそれなりに利用できる環境です。自宅から徒歩圏内にスーパーがあり、眠っていた缶詰たちを順番に調理する楽しみやアパートの玄関前には屋上もあるので、小回りのジョギングや筋トレを始め、Zoomで飲み会をするなどあまりストレスなく生活ができています。日本に帰国すれば食生活は確実に改善しますが、帰国後の自主隔離や狭いアパートに閉じ込められること、次に説明する感染リスクを考えると、今のところ精神的にも肉体的にも健康的な生活ができているので生活についてはチェンナイが極めて快適です。

2.感染者数の状況

2020年4月7日現在で感染者と死亡者は以下のような状況です。

インド国内感染者 :4,778名(うち死亡者数133名)
日本国内感染者  :4,112名(うち死亡者数97名)

この数字を見ると概ね同じぐらいの状況と言えそうですが、ロックダウンしているインド国内においては国内移動どころか外出さえろくにできない状況で、都市別に状況を把握する方がいいと思いますので、チェンナイ、バンガロール、東京、大阪を比較してみるとこんな感じです。

チェンナイ 感染者  :113名
バンガロール 感染者 :55名
東京 感染者     :1,116名
大阪 感染者     :428名

すでに先月からロックダウンが始まっているチェンナイと、これまで自粛要請でやってきた東京を比較すると感染リスクは明らかに日本が高く、数字で見ただけでも10倍ですが、ロックダウン中のチェンナイと、いまだに電車通勤や集団行動が絶えない東京を比べれば、現時点での情報に基づく限りにおいて火を見るよりも明らかです。(※PCR検査数など多くの外的要因はあると思いますが、日本も検査数が少ない国の一つで、チェンナイと東京の感染者数の差を説明できるだけの要因ではないと考えています。)

3.感染した場合の医療体制

チェンナイにも外国人が治療を受けられる私立の医療機関はそれなりにありますが、万が一新型コロナウイルスに感染してしまった場合にはそれなりの覚悟が必要と認識しています。また、万が一インドで感染爆発が起こってしまい、かつ、自分が感染してしまった場合には適切な医療サービスを受けられる保証はなく、この点が多くの駐在員に帰国指示が出ている大きな要因のひとつだと思います。

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以上の3点が帰国すべきかどうかの判断材料とした主な前提条件です。インドでの事業や日々の仕事についてはある程度場所を問わずにリモートでも遂行可能なため、今回の意思決定において仕事面はほとんど考慮していません。つまり、(1)新コロに自分自身が感染することを可能な限り防ぐのならチェンナイに残留、(2)新コロに感染してしまう可能性を前提にするなら医療体制が整った日本へ帰国、というのが私の判断基準です。

新コロの感染経路について調べる限り、新コロへの感染を防ぐことは“自分の行動を徹底する限りにおいて”可能だと考えていて、したがって、帰国までの移動や東京の状況を考慮すると、チェンナイに残る方が感染リスクをより軽減できると考えました。そして、新コロに感染する確率や、さらに、感染して死亡する確率を見ている限り、自分自身がインドや日本でこれまでの人生で受け入れてきたリスク(クルマの交通事故で死ぬリスクや、従来から存在しているその他の感染症にかかって重症化するリスクなど)と比べてもどんぐりの背比べであるような気がするので、新コロに感染してしまう可能性を前提にした判断するのではなく、過剰に反応せず、粛々と自分の行動を制限して新コロへ感染しないための行動・予防を徹底する(=人との接触をともなう移動を可能な限り避ける)ためにチェンナイに残りたいと思います。

各国政府によって対応状況は異なりますが、私たち個人が得られる情報は平等にあって今世界で何が起こっているのかは推測ができる時代なので、各個人が感染しないための、そして、他の誰かに感染させないためのベストな行動をとって、またみんなで会って一緒にお酒が飲める日が来ることを楽しみにしています!

(写真:ジョギングや筋トレをしている自宅の屋上より)

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