旅心くすぐるQuaQuaのVR戦略。コロナウイルス終息とともに化けることができるだろうか?

by 田中啓介 / Keisuke Tanaka

(1)旅心くすぐるQuaQuaのVR戦略。コロナウイルス終息とともに化けることができるだろうか?

インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2020年6月2日付報道によると、ハイデラバードを拠点としている旅行サービスプラットフォームの“QuaQua(クエイクエイ)”はベンチャーキャピタルのAnthill Venturesとその他の投資家から100万ドルを調達したようです。

■ QuaQuaが提供するサービス

QuaQuaはAR(Augmented Reality:拡張現実)およびVR(Virtual Reality:仮想現実)対応の旅行コンテンツ、メタデータ、あらゆる観光地のコミュニティ情報や予約機能を搭載しており、優れたナレーションとVR動画でユーザーの旅行意欲を掻き立たせるとともに、同プラットフォーム内で旅行の計画から予約、サポート、旅行の思い出をシェアすることができるエンドツーエンドのコンテンツ主導型AIプラットフォームです。現時点で約250万人、100ヵ国以上のユーザーを抱えており、新型コロナウイルスのパンデミックによりリピート率が70%近くまで高まっているようです。

創設者であるPurav Shah氏とSandesh Reddy氏は今回調達したファンドを使って、同プラットフォームの品質を上げるとともに、インド国内の125の観光地を追加すると発表しています。Anthill VenturesのパートナーSailesh Sigatapu氏は「QuaQuaのようなコンテンツ主導の旅行ネットワークは観光産業にとって革命的な変化になるだろう」と期待をあらわにしています。

■ インド国内市場の可能性と展望

現在はすべてのコンテンツが無料で視聴することができます。私も視聴してみましたが、都市の魅力を最大限に引き出す映像、音楽、ナレーションに引き込まれ、実際にその都市を旅しているかのような臨場感を味わうことができました。インドでもMakeMy Trip(メイクマイトリップ)やClear Trip(クリアトリップ)などの旅行サービスアプリは多いですが、基本的なサービス内容は旅行の予約のみで、予め検索エンジンやYouTube、Instagramなどを使って行き先を決めておく必要がありました。QuaQuaではクオリティの高いVR動画やその他豊富な動画コンテンツ自体を楽しむことができるので、他の旅行サービスプラットフォームやアプリとはユーザーの利用目的も変わってきそうです。

なお、Facebook傘下のOculus Questを筆頭に、スタンドアロンで動作する最先端のVR端末が5〜6万円程度で日本でも出回ってきていますが、一方で、インド国内では品質や機能は大きく劣るものの2,000〜6,000円程度で購入できるVRヘッドセット、スマートフォンに装着するタイプの簡易VRメガネが販売されています。現時点では、インド国内消費者がVRヘッドセットを個人で購入する人はまだ少数派で、所得水準が向上し、かつ、端末としての機能向上および品質向上が進めば、大きなビジネスチャンスに繋がるのではないかと感じます。

新型コロナウイルスの影響で観光産業が落ち込んでおり、今後いつ普通に旅行ができるようになるか分からない状況の中で世界中のユーザーのリピート率が上がっているのは、旅行に対する期待と希望が高まっているからだと思います。今後QuaQuaがどのように成長していくのか楽しみです。

Sourse:旅行サービスプラットフォームのQuaQua、100万ドルを調達

 

(2)メッセージングアプリのユニコーン企業Hikeは競合他社との差別化に成功するだろうか?

■ Hike(ハイク)が提供するサービス

インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2020年6月17 日付報道によると、デリー拠点の人工知能を利用したメッセージングアプリを展開しているHike(ハイク)は元々計画していたマネタイズ化を数か月以内に進めていくことを発表しました。Hikeは2012年12月にローンチされ、4年以内に評価額が10億ドルに達し、インド国内で最も速くユニコーン企業となったスタートアップ企業です。新型コロナウイルスの影響で給与削減や人員削減せざるを得ない企業が多い中、Hikeは企業拡大のために現在も社員の採用を進めています。CEOのKavin Bhari Mittal氏は「景気悪化で人々の消費意欲が落ちており、7月から9月の第2四半期は厳しくなるだろう。しかし弊社は使用料が5ルピー(約7円)からスタートする低額課金を考えており、消費者にとって大きな障害とはならないだろう」と述べています。

■ インド国内市場における競合と今後想定される事業展開

今年1月にインド国内のHikeユーザー数は約5億人に達しており、週間アクティブユーザーは200万人いるようです。一方で、全世界に20億人のユーザーを抱え、シェア数世界一を誇るFacebook傘下のメッセージアプリであるWhatsApp(ワッツアップ)もインド国内に4億人以上のユーザーを抱えており、最も大きな市場であるインド国内の競争は激化しています。

Hikeは2017年に世界で初めてモバイル決済機能を導入したメッセージングアプリとして話題となりました。WhatsAppも今年モバイル決済「WhatsApp Pay(ワッツアップ・ペイ)」を導入することが発表され、6月16日にブラジルでの導入が決まりましたが、インドでは2020年6月現在でまだ導入されていません。また2014年時点でHikeで一度に送ることのできるファイル容量は100MBと、当時のWhatsAppの16MBに比べると約6倍のサイズまで送ることができたため、動画のシェアなどを多くする若者層から指示を得ていましたが、現在はWhatsAppも128MBまで制限を拡大しています。両社ともアップデートを重ね機能が向上し、お互い引けを取りませんが、若年層ユーザーが最も気にする両社のサービス違いはスタンプ数にあると思います。Hikeはローンチ当初からスタンプでのコミュニケーションに力を入れており、豊富なラインナップが取り揃えられていましたが、WhatsAppがスタンプ機能を導入したのは2018年10月でした。実際私もインド人とのコミュニケーションはWhatsAppでとっていますが、スタンプを使っている人はほとんどいません。日本ではLINEが主流ですが、LINEスタンプが豊富なためスタンプのみの会話や、スタンプで会話を終わらすといった使い方をしている人も多いのではないでしょうか?

現在Hikeは人工知能(AI:Artificial Intelligence)や機械学習(ML:Machine Learning)、自然言語処理(NLP:Natural Language Processing)を活用した新しい付加価値の創出に力を入れており、今後競合他社とどのようにして差別化を図っていくのか期待がされます。

Souce:メッセージングアプリのHike、マネタイズ化に強気の姿勢

 

(3)テレメディシンは今後インドのヘルスケアにどのような影響を与えるだろうか?

インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2020年6月24 日付報道によると、新型コロナウイルスが蔓延したことにより、インドヘルスケア部門の“テレメディシン(遠隔医療)”に対する関心が高まっているようです。新規感染者が増え続けるインドにとって、感染を拡大させないためにも医療関係従事者と患者の密な接近は極力控えるべきであり、よってテレコンサルテーション(遠隔医療相談)ができるアプリの必要性に迫られています。

■ 注目されるインド国内スタートアップ「1mg」および「Practo」

オンライン薬局サービスを展開するインドのスタートアップ1mg(ワンミリグラム)は、インターネットを介した医療診断サービスの提供も開始しており、インド保険家族福祉省(Ministry of Health and Family Welfare)にも認定をされ、ユーザー数およびアクセスを大きく伸ばしています。また、デジタルヘルスのプラットフォームであり医師検索および医療情報サービスを展開するPracto(プラクト)ではインドで新型コロナウイルス感染者が確認され始めた今年3月上旬から、アクセス数の増加、および登録医師が増加し続けているようです。

■ インドの現状課題とビジネスチャンスの展望

インド政府は歳出の0.9%(日本では11.8%)をヘルスケア部門に投じており、そのうち地方のヘルスケア施設に費やしているのはほんの僅かです。地方の医療インフラが整っていないことで患者を治療したくてもできない、というのが現状です。インド国内の1医師に対する人口は1457人ですが、これを地方でみてみると1医師あたり25000人(日本では1医師当たり平均約381人)と、いかに地方での医師不足が深刻か分かります。こういった問題の解決策のひとつとなるのがテレメディシンとなるでしょう。テレメディシンは地方の医師不足やアクセスの問題だけではなく、コスト削減、クオリティの向上などあらゆる面での期待ができます。現在でもオンライン予約や、電子処方箋、定期通院の方向けのオンライン通知、自宅でできる血液検査などがありますがまだ一般的に利用されているとは言えません。インド国内の新型コロナウイルスの新規感染者は今もなお増え続けており、病院に行きたくても感染が気になり気軽に通院することができない人も多いと思います。今後政府のテレヘルス分野への投資と、規制緩和が進み、一日でも早く遠隔医療が一般的に使われるようになることを望んでいます。

Source : コロナウイルス蔓延で、テレメディシンへの関心高まる

 

https://g-japan.in/news/start-up-vol-003/

https://g-japan.in/news/start-up-vol-004/

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