自動車部品業界に君臨する鋳造(ちゅうぞう)と鍛造(たんぞう)

by 田中啓介 / Keisuke Tanaka

最近、自動車部品メーカーを訪問する機会が多いのですが

特にその製造現場である工場は私にとって新しい世界です。

会計事務所や経理部門でしか働いたことのなかった私には

これまでの人生で学生の頃の工場見学以外、

実際の製造現場をほとんど見たことがありませんでした。

しかし、2012年8月からインドにに赴任して以来、

約100社近くのインド企業をインタビューし、

その実際の工場を視察させていただく機会を得るようになって

自動車業界の裾野の広さや工作機械の発明の素晴らしさ、ものづくりの奥深さ

インド人が日本に対して有している信頼感を実感するようになりました。

そして、その信頼感は日本の諸先輩方が築いてきて下さった財産であるということも。

 

特に興味深かったのは自動車部品の製造プロセスには欠かせない

鋳造(ちゅうぞう:Casting)や鍛造(たんぞう:Forging)といった金属加工

これら金属加工法は自動車の製造だけでなく、様々な物をつくる上で利用されてきました。

鋳造品は溶解した金属を型に流し込んで固める方法で

身近なものでは道路のマンホールや指輪等のアクセサリ、

水道の蛇口やあの奈良の大仏までもが鋳造によるものだそうです。

一方で、鍛造品は加熱した金属に圧力を加えるという方法で

日本では昔から日本刀や包丁などの刃物、銃身などの製造方法として利用され、

金属をより強靭にすることができるために

自動車部品の中でも特に強度が求められる部品の製造において利用されているようです。

 

例えば、鋳造に関しての一連の製造プロセスを見てみると、

CAD/CAM等のソフトウェアを使って部品のデザインをし、

そのデザインを基に金型のデザイン及び製造を行い、

原材料を仕入れ、それを溶解して、鉄や砂の型に流し込み、

固まった部品を熱処理して、一定の表面処理や加工を行い、

そして、接続部分などをCNC機械等で切削加工して製品化します。

さらに関連部品と一緒に組み立てる(アセンブリーする)企業も多くあります。

その一連の製造プロセスをどこまで社内で実施するのか

それらのプロセスをいかに効率的かつ効果的に

そして、いかに高品質かつ低価格な製品を提供できるか

どこまで顧客のニーズに見合う付加価値を提供できるかが事業の明暗を分けます。

以前に運転資金の考え方についての記事を書きましたが

特に製造業の場合にはその短期的な運転資金の管理は重要ですが、

それと同時に、機械設備の導入や技術者の雇用・教育には莫大な投資が必要で、

固定費・変動費を考慮した上でどれぐらいの期間で投資の回収ができるか

中長期的な視点での投資の回収戦略も非常に重要になってきます。

 

話は変わりますが、

インドの自動車部品業界におけるひとつのトレンドでもある

自動車の燃費効率を向上させるためには様々な方法があるようですが

その中でも特に分かりやすいのが車体重量を軽量化すること

先日、あるインドの大手自動車部品メーカーの方から聞いたんですが

部品の重量を軽量化する方法にもたくさんあるんですね。

より強度の強い素材(例:超硬合金等)を使うことで部品の厚さを薄くしたり、

今まで使っていた素材(例:スチール等)を

より軽い素材(例:プラスチックやアルミニウム、マグネシウム等)に変えたり、

そもそも製造方法(例:鋼棒による部品ではなく鋼管を利用した部品)に変えたり、

それらの素材や製造方法ひとつひとつにまた違った技術・機械設備が要求されるわけで

自動車部品業界はホントに奥の深い世界だなぁとひとりで感動していたのでした。

 

(最近訪問した鋳造部品メーカーの工場の様子)

Foundry

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