インドの大学で日本語を教えてみて〜私が学んだ教訓から読者の皆さんへ伝えたいこと

by 橋口悠雅

1. はじめに

皆さんは、大勢の人の前に立ち何かプレゼンテーションを行うことに対して、恐怖心を感じますか?それとも、ワクワクと挑戦的な気持ちになりますか?

私は、そのどちらの気持ちも順番に感じてしまいます。実は、先日、インドのラマイア工科大学にて約50名のラマイア学生に対して日本語の授業をしてきました。

英語で約80分間、自分が作ったPower Pointを使用して、日本の文化や観光地について知ってもらうといった内容の授業です。結論を率直に述べると、現在の心境は、本当に有意義で価値のある経験が出来たと実感しております。

私自身、誰かに授業をするといった経験が無かったので、どう授業を進めるべきか悩むことがありました。しかしながら、結果的に授業はスムーズに進み、終わった今では自分なりに成長できた良い機会だったと安堵しています。

本記事ではインドのラマイア工科大学で日本語の授業を行った実体験をもとに、実行までの流れ、授業中の雰囲気、この経験から学べた教訓といった内容に関して詳しくまとめたいと思います。今後、英語でプレゼンをする機会がある人や人前で話せるようになりたい人に向けて執筆するので、ぜひ、これらに当てはまる人は最後まで読んで頂けると嬉しいです。

2. 日本語の授業をしたキッカケ

では、そもそも、なぜ私はインドの大学で日本語の授業をすることになったのか、そのキッカケを読者の皆さんにお伝えしたいと思います。

2023年現在、私はインドのバンガロールという都市でインターンをしています。仕事としては、記事の執筆を主に行っており、最近インドの会計ソフトの練習も同時並行させて頂いています。

バンガロールに来たのは、「IT人材が多く未来有望な国でインターンをすることが、将来的な自分の人生にとって非常に価値があるはず」と考えたからです。

昔からグローバルに活躍できる起業家を目指していたのですが、私自身かなり怠惰な性格でして、それほど自分と向き合う機会を作っていませんでした。要するに、実際に自分が何をしたいのか、どういう人間なのか、など人としての芯が定まっていない状態だったと言えます。

そこで、心機一転、自分を追い込み、様々な経験を積みながら深く考える時間を取りたかったという理由で、インドという新たな地に飛び込んだということです。

これらの前提がある上で、インドの優秀な学生が多い大学で授業をすることが、新たな出会いや挑戦という点において、今の自分がするべき事だと考えました。

実際に授業が出来たのは、インターン先の代表のご厚意なので、そのような機会を作って下さったことにも感謝したいと思っています。

私は偶然、お世話になっている方がインドの大学と接点を持たれていたかもしれませんが、皆さんの中には「普通そんな繋がりないでしょ…」と思われる方がいるかもしれません。

しかし、そういった場合でも、「お金は必要ないから日本の文化を教えたい!」と大学に行って伝えれば、たいてい取り合ってくれると思います。

3. どのような準備をしたか

そして大学との話し合いがまとまれば、残るは本人のヤル気次第で授業を成功に導けるかどうかが左右されます。ということで、以下には私が具体的に何を準備したのか大きく3つに分けてみました。ぜひ、皆さんと共有したいと思っているので参考までに読んでみてください。

(1).日本の文化を盛り込んだPower Pointの制作

まず初めに行う準備は、授業を滞りなく進めるには絶対に必要な資料作りです。もちろん、登壇して、自分の言葉だけで授業をすることも可能かもしれませんが、それなりの実力がないと唯々立ち尽くすだけになってしまうことでしょう。

そのような事態にならないためにも、学生が興味を示せるトピックで目に見える資料を作ることは必要不可欠ではないかと思います。

上の写真は実際に私が作った資料の始まりのページです。普通の授業資料と違う点として、日本語の上下に、ローマ字を使った読み方、英語を使った意味、という2つを同時に見られるようにしました。

私も最初は、日本語と英語だけ使った資料を作っていたのですが、インド人の友達から「この資料だと学生は日本語の発音が全く分からないよ」と注意されてしまいました。私たち日本人が当たり前に読んでいる日本語は、外国人からすると非常に難しい言語であることを理解する必要があります。

そして、内容はアニメやマンガといった若い学生が興味を示せるトピックを選定しました。学生が楽しめるポイントとして、飽きを感じさせないようにイメージや動画を多く使うことを意識しています。

私も現役の大学生ではあるので、学生の気持ちになって考えると、文字しかなく教授が独りよがりで進めていく授業ほど退屈なものはありません。

なるべく、「学生も参加出来て一緒に授業を創り上げるという気持ち」がとても重要なことではないかと思います。

(2).授業全体の原稿をWordでまとめる

次に行ったのは、授業全体の通しで使う原稿作りです。「え~、原稿なんて書かなくてもアドリブで大丈夫でしょ!」と思われる方、それで良いと思います。

なぜ、そのままで良いかと言うと、1度アドリブでやってみて自分の無力さにショックを受けて欲しいからです。もし、人の前に立って話した経験が全くない方であれば、冷静に授業の内容を整理しながらアドリブで話すことはとても難しいと思います。

学校の先生が行う授業や優秀な実業家が行うプレゼンは一見、原稿を必要としていないように見えますが、それは相当数の練習と経験が可能にしていることなのです。

ということで、私の場合はWordに英語の原稿を全て書き出し、その途中でいくつかジョークを挟んでみたりしました。実際に笑ってもらえたのはごく少数でしたが…

この際に気を付けた方が良いポイントとしては、「自分の文章を原稿にする」ことです。現代では、生成AIや他の便利なアプリケーションの台頭で、文章を自身で考える必要が無くなってきました。私もこれらのようなサービスは日常的に使っています、しかし、自分の授業やプレゼンとなると話は違ってきます。

かなり非科学的なことを言うようですが、言葉1つにしてもその人の気持ちが乗らない限り、聞き手としては非常に軽く聞こえてしまいます。

仮に、学校の先生が教科書の言葉だけを使って授業をしていたら、若手の起業家が取ってつけたようなビジネス用語だけでプレゼンをしていたら、「なんか言っていることが浅いよな…」と興味を失ってしまいませんか?

このような捉えられ方をされないためにも、上手じゃなくて良いので自分の言葉で原稿を作ってみてください。

(3).緊張がほぐれるまで練習!

最後は、やはり練習を重ねることに尽きると思います。本記事の冒頭でも述べた通り、私は人前で話すことがそれほど得意ではありません。どうしても、複数人注目されていると感じると要らぬ心配が襲ってきます。

しかし、なぜ自分はそのような感情に陥るのだろうと考えてみると、答えは簡単で「自分の授業やプレゼンに対する自信が足りないから」だと分かりました。

つまり、自分の授業やプレゼンが絶対に成功するという域まで十分に練習すれば、自ずと良いイメージが湧いてきて心配が自信に変わります。

「じゃあ、何回ぐらい練習したら良いですか?」という質問に対しては残念ながら答えられません。人によって1、2回で十分の人もいれば、10回以上になる人もいるでしょう。

具体的な数字は分かりませんが、緊張して本番までの時間を過ごすよりも、しっかりと準備を重ねて本番を楽しみに待てる方が誰にとっても良いことではないでしょうか。

(4). 日本語の授業で大切だと感じたこと

では、私が実際に日本語の授業をやってみて、特に大切だと感じたことについてここでは振り返っていこうと思います。

正直な所、授業中は私もドーパミンが相当出ているので、「とりあえず授業を上手に進めなければいけない!」という思考が巡っていました。それ自体は悪いことではないのですが、あまり授業の成功という考えに固執しすぎると1つ問題が発生してしまいます。

それは、授業の主体が学生ではなく、教えている自分になってしまうことです。というのも、私がこの問題に気づくまでは、インドの学生が日本語を学ぶという大事な要素を無視して独りよがりな授業になっていたような気がします。

まさに、私が大学で感じていた退屈な授業と似たような雰囲気でした。何のために授業をしているのかっていう話ですよね…

(*2)

それに途中で気づいた私は、「学生の読むスピード、考える時間、発言する機会」という部分に気をかけて授業の主体を学生にするよう進め方を変えてみました。すると、学生の反応も少しずつ良くなり、今まで黙っていた学生からも日本語を読む声が聞こえてくるようになったのです。

さらに、これは第2言語で授業をしていた私にとって非常に嬉しいことなのですが、学生のスピードに合わせると必然的に英語を考える時間が十分に取れるようになります。どうしても、自分主体の授業だと準備していた英語を正しく発音しようとして、授業のスピードが速くなってしまい、学生も日本語を理解する時間が確保できません。

このような事態にならないためにも、学生の表情や授業中の雰囲気に意識を当てて、独りよがりの授業にしないことが大切になってきます。

5. この経験から学べた教訓

今回の授業は、ただ私がインド人の学生に日本語を覚えて欲しかったから行ったことではありません。何より、自分自身がこの経験から何か学べることがあるかもしれないという期待から、会社の代表に頼んで実現させて頂きました。

そこで、この日本語授業から学んだ,私の教訓を3つまとめたので、今後、同じように海外の大学で授業をする、何か新しいことに挑戦するという方々は、以下のような考え方を頭の隅に置いて頑張ってください。(※ちなみに、教訓自体は特に珍しいものではありません)

(1).何事も早めの準備を心がける

1つ目は何をするにしても、なるべく早く取り組むということです。至極当然のことを述べているようですが、これを実行できるかどうかで周りからの信頼や評価が随分と変わってきます。

私はこの授業の資料を作っている過程で、何度か修正を施す必要がありました。それが可能だったのは、自分でも気づかないポイントをインド人の友達に指摘してもらえたからだけでなく、授業当日までに修正できる時間の余裕があったからだと思っています。

Power Pointで資料を作るにしても、Wordで原稿を下すにしても、急ぎで終わらせようとすると、どうしても中途半端な出来栄えになりかねません。

そうならないためにも、「早めに手を付けて修正しながら終わらせる」ということが大切になります。私も自己管理があまり得意ではなく、自分の怠惰さと日々葛藤しながら生活していますが、最近は自分を変えるという意味でも早めの準備を心がけるようにしています。

(2).やれば出来る!!

2つ目が「やれば出来る!!」という非常に昭和の精神論的な教訓です。私は生粋のZ世代ですが、精神の強さが大事を成すかどうかという点に強く影響すると考えているので、このような教訓があったと思いました。

非英語ネイティブかつ人前での授業が初めてという私でしたが、やってみた結果、成功したかどうかは分かりませんが確実に自己成長したという実感はあります。

仮に今回の日本語授業を何かしらの言い訳で実行していなかったら、この記事を書けてないだけでなく、英語で授業をしたことがあるという経験もなかったでしょう。それは、私にとって何よりも避けるべき事でした。

よっぽど失敗する方が自信はつくし、自分は挑戦できたという気持ちになれます。「やれば成功できる」と考えるのではなく、「やれば成長できる」と考えれば何事にも挑戦しようと思えるのではないでしょうか。

(3).楽しむことを忘れない

3つ目が、何をするにしても楽しむという気持ちを忘れないということです。これは、私が今回の授業を通して最も重要だったと思う教訓です。

なぜかというと、楽しむという行為は何よりも人の心を良い方向に動かす感情だと私は考えており、仮に、ずっと張り詰めた顔をした先生が授業をしていても、その授業を学生が心から楽しめるはずはありません。

私は、この日本語授業が始まって30分ぐらいは緊張と責任感でずっと硬い表情のまま授業を行っていました。そうすると、やはり学生は着いてこないだけでなく、自分も不安な感情に駆られてしまいます。

なので、学生主体の授業に進め方を変えたと同時に、自分も今この瞬間を楽しもうと心がけて残りの授業をやり切りました。

すると、劇的に生徒の反応は良くなり、授業全体の雰囲気が自分の背中を押してくれているような感覚になります。

これは、授業に限った話ではなく、ビジネスでも友好関係でも、今自分が行っている行為を楽しめる人は周りの人の気持ちや行動も変える力があります。一度、自分の感情と向き合って、今後の人生を楽しんでみてください。きっと、新たな考え方や見落としていた側面に気づけるはずです。

6.まとめ

本記事では、私のインドの大学における日本語授業をもとに、どのような準備をしたか、何を学ぶことが出来たかといった内容についてまとめてきました。

最後まで読んで頂いた皆さんは、今後新たな挑戦をされる予定の方々が多いと思われます。その中には、少し不安を抱いていて上手くいくか心配されている方もいることでしょう。

安心してください、きっと上手く行きます!!根拠はありませんが、私が思うにそれらの経験は確実に皆さんを成長させる糧になるはずです。

そして、何よりも「楽しむのが一番大事!」ということを忘れないでください。私は本記事を通して、皆さんがますます成長することを願っています。

 

※本記事の参考サイト一覧

(*1) How Long Does it Take to Learn Japanese? | Full Timeline (preply.com)

(*2)Why are our children so bored at school, cannot wait, get easily frustrated and have no real friends? — Victoria Prooday (yourot.com)

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