このサイトに来る方は「インドで働くとはどういうこと?」を知りたくて検索してくれる方も、多いかもしれません。
「インドの会社で働く」ことについての情報は、最近徐々に増えてきました。しかし、「日本のインド人経営企業で働く」情報はさらに少なく、ほとんど見かけないのではないでしょうか。
いったいどんな経緯で、インド人経営企業で働くことになったのか?
インド人と一緒に働く上で、Tさんが気をつけていることとは?
「インド人しか、友達いません」と話す、Tさんのバックグラウンド
Tさん:「新卒からIT業界でエンジニアとして働いています。」
Tさん:「そうですね。なぜかよくわからないけど、インド人とは気が合うんですよね。」
Tさん:「はい。過去にナマステ・インディア(年に一度東京・愛知などで開催されるイベント)の運営を手伝ったり、ポンガルという南インドのお祭りを企画・運営をしました。インド人を集めるのは得意です(笑)」
Tさん:「はい、行こうと思っていたんですが、コロナで行けなくなってしまいました。ぜひいつか行ってみたいですね。」
インド人コミュニティとつながったきっかけ
Tさん:「きっかけは数年前に勤めていたITの開発現場です。別会社だけど、同じフロアで働いていたKさんと知り合いました。喫煙所で一緒になって、その日のうちに飲みに行って仲良くなりましたね。後々わかったんですが、Kさんは名古屋のタミル人(南インド)コミュニティの親分みたいな人だったんです。Kさんと遊んだりしているうちに、徐々に周りのタミル人たちともつき合うようになっていきました。」
Tさん:「そうですね。Kさんがはじめてのインド人でした。そして、この頃から「将来はインド人と関わりたい」と思うようになりましたね。」
Tさん:「単純に、私がお話をしたインド人の給料がよかったんですよ(笑)彼らは、収入について聞いても、みんな嫌がらずにオープンに教えてくれるんです。それで、なんかこういうオープンなコミュニケーションっていいなぁって、羨ましくて(笑)あとは、単に話していておもしろいです。日本にいるとなかなか感じられない独特な雰囲気を感じられて、好きだなーと感じたんです。」
インド人の会社で働く
Tさん:「以前から、日本人のお客様とインド人エンジニアをつなぐような「インド専門コンサルタント」をやりたいと思っていました。実際、自分で会社を作って挑戦したこともあるのですが、自分にはまだスキルが足りないことに気づいたんです。それで、「インド人の会社で実績を積みたい」という考えに変わっていきました。そんなとき、以前から友人だった今の会社のインド人社長に「うちで働かないか?」と声をかけてもらったんです。」
Tさん:「ITソフトの会社で、社長とその他20人くらいインド人エンジニアが働いています。僕は今、お客様の現場に出向している形なんですが、そこでは1人のインド人と一緒に働いています。」
日本人とインド人。Tさんが思う仕事に対する意識の違いや特徴
Tさん:「そうですね。キャリア設計の意識が全然違いますね。インド人は3年くらいですぐに転職します。スキルを身につけて、ステップアップのために転職するのが当たり前という感覚ですね。」
Tさん:「そうですね。インド人は「次のステップに行くための経歴を作る」という考え方ですね。インドには有名なトップIT企業がいくつかありますが、みんな転職しながらステップアップし、そこに行くことを最終目標にしているようなところがあります。」
Tさん:「私が知る限り、一般的に会社での分業がはっきりしているため、インド人は自分の担当業務以外はやらないところがあるように感じますね。」
Tさん:「そうですね。あと、日本人と比べると仕事において意識をしている観点に違いを感じます。日本では「お客様のことを思って」というサービス精神が強く、優先させる風潮があるように感じます。対して、インドでは会社への貢献は「いかに自分の技術を上げるか」をより強く意識している気がしますね。」
Tさん:「やっぱりインド人の時間や納期に対する感覚は、日本人とは異なります。これは文化の違いと割り切って、自分の仕事をするようにしています。あと、インド人をマネジメントするときに、Kさんからいくつかアドバイスをもらいました。基本的に、相手のことは全面的には信用せず、自分の目で細かいところまでチェックした方がいいと言われました。相手に期待しすぎないことで、ミス等のリスクを最小限にしています。また、インド人が自分で「やりました」と言っても、日本人が思う「できた」との感覚に違いがある場合があります。なので、途中でも細かく進捗を確認することが大事だと思いますね。」
インド人と仲良くなろうと思ったら、こちらから施すこと
Tさん:「フレンドリーに見える彼らですが、意外と心を開くまでには時間がかかるんですよね。」
Tさん:「そうなんです。僕はインド人と仲良くなろうと思ったら、こちらから施すようにしています。例えば、ご飯をおごったり、面倒な手配をしてあげました。でも、それに対する見返りは求めない。この姿勢が大事かなと思います。あと、インド人が「やりたい」と思うことをコーディネートしてあげましたね。「インドのお祭りをしたいから、50人くらいが集まれるところはないか」と相談されれば、会場を探してあげました。それでインド人の信頼を得てきたところはあると思います。「Tと関わると自分たちにメリットがある」ときっとそう思ってもらえたんだと思います(笑)
Tさん:「自分の出身地に誇りを持っている人が多いです。なので、自分の発言が相手の文化や価値観を批判しているように思われないように気をつけてはいるかな。あと、カーストの話もしないようにしています。デリケートな部分で、彼らのアイデンティティに関わることなので。
Tさん:「はい。あと、インド人は上下関係が厳しいですね。コミュニティの中で彼らがどんな位置関係にあるのか、把握するようにしています。僕はコミュニティの親分であるKさんと友達なので、みんなから一目置かれているところはあると思います。また、インド人って家族が一番大事なんです。だから、奥さんや家族のことを積極的に褒めるとみんな喜びますね。」
「インドに食わせてもらっている」意識
Tさん:「単純にインド人と波長が合うんですよね。インド人は細かいことを気にしないので、一緒にいて気楽な部分はあります。あと、カレーやビリヤニ(インドの炊き込みご飯)などのインドのご飯も好きですよ。また、やっぱり日本で働いているインド人を応援したいという気持ちもあります。自分は今までインド人と関わってきて、インド関係の仕事もするようになって、「インドに食わせてもらっている」という意識があります。日本で働いて、税金を収めてくれている彼らには感謝していますよ。」
インドと関わり続けたい
Tさん:「スキルを身につけて、半年~2年くらいで独立したいと思っています。僕は技術者として大したことはないけど、オープンなコミュニケーションスタイルで乗り越えてきた面があります。この自分の強みを活かせるのが、インド人コミュニティだと思うんです。インド人をマネジメントする経験を積んで、「Tならインド人のマネジメントを任せられる」という信頼を得たいですね。あとは、インド関連の仕事に興味がある日本人の若者に向けて情報発信もしていきたいです。」
Tさん:「はい、がんばります。」
Tさんからは、インド人経営企業で働くことだけではなく、つき合い方のコツやどのようにインド人から信頼を得たかというところまで、とても貴重なお話を伺うことができました!
Tさんが地道に積み上げてきたインド人との信頼関係。「自分はそんな大したことしてないですよ。ただ一緒に酒飲んで、遊んできただけです」とTさんは笑います。