日系飲食企業のインド進出 “くふ楽”インディア、本多康二郎さんインタビュー

by 橋口悠雅

1.はじめに

本記事は日系飲食企業のバンガロール進出に関する、2つ目の記事です。今回は、インド各所で非常に人気のある日系飲食店“くふ楽”インディアさんの成功要因についてインタビューをさせて頂きました。

1999年に、一軒の焼鳥屋からスタートした株式会社KUURAKU GROUPは『記憶に残る企業』というビジョンを掲げ、現在ではグループ会社を含め世界中で約40店舗を運営しています。

そして、この株式会社KUURAKU GROUPのインド進出をサポートし、共同経営されている方こそが、今回インタビューをさせて頂いた株式会社サブヒロハマコーポレーション代表取締役の本多康二郎さんです。

 

企業プロフィール

・会社名        : 株式会社KUURAKU GROUP

・代表取締役     : 福原裕一 氏

・事業内容        : 飲食店経営 / 店舗プロデュース / 学習塾経営(ITTO個別指導学院)コンサルティング事業etc.

・企業ホームページ  : Company – 株式会社 KUURAKU GROUP (*1)

 

企業プロフィール ②

・会社名        : 株式会社サブヒロハマコーポレーション

・代表取締役     : 本多康二郎 氏

・事業内容        : 海外進出コンサルティング(南アジア)/一般貨物運送事業、倉庫管理実務、倉庫運営コンサルティング(国内)

・企業ホームページ  : サブヒロハマコーポレーション (sub-hirohama.com) (*2)

 

2インド、バンガロールにおける飲食店経営

株式会社サブヒロハマコーポレーション代表、本多康二郎さん

(株式会社サブヒロハマコーポレーション代表、本多康二郎さん)

 

2-1. ビジネス設立の経緯と目的

・筆者

橋口
橋口
本多さんがインドでビジネスを展開するまでに至った経緯を教えて頂けますか?

・本多さん

そうですね。もともと、事業家であり起業家だった祖父の生き方に幼い頃から憧れて「自分でも起業したい」という思いがあったんですよね。

その中でも、特に0から1を創り出すことが好きで、祖父が創業した(株)ヒロハマでの経験と、父から受け継いだ(株)サブヒロハマコーポレーションでの経営から学びを得て、インドにおける自分のビジネスを開始したという経緯があります。

海外への興味は学生時代から持っていて、アメリカやイギリスでの留学を経た末に、特に人口が多く経済成長が続くと予測できたインドに目を向けました。(*3)

ちなみに、(株)サブヒロハマコーポレーションの代表でもあるのですが、2008年1月頃に元々のインド母体として立ち上げたHIROHAMA INDIA PVT. LTD. (ヒロハマ インディア株式会社)のCEOとしても、企業様のインド進出からテストマーケティングまで、ハンズオンでサポートしています。

こちらは、「株式会社ヒロハマ」、「株式会社SUBヒロハマコーポレーション」、「BOMBAY CHEMICAL AND RUBBER PRODUCTS」、これら 3社の合弁企業として設立しました。

 

企業ホームページ:

Hirohama | Hirohama India Private. LTD. (hirohama-india.com) (*4)

 

2-2. 経営戦略

・筆者

橋口
橋口
インド現地の飲食店との差別化としてどのような点を意識されていますか?

・本多さん

差別化という部分では、日本人であることを最大限利用して、本物の日本食、居酒屋の雰囲気を体験してもらうことに拘っています。

最近はインド人オーナーの方で日本食レストランを経営する方々も増えていますが、やはり日本人である限り、本物を提供するという点では有利だと考えますね。

特に、日本を感じてみたい裕福層の方にとっては、“くふ楽”での食事が非日常を楽しめるエンターテインメントとして受け入れられると思います。

なので、店舗の内装やスタッフのトレーニングを徹底しており、日本ならではのブランド作りを続けています。

 

2-3. メニューの開発

・筆者

橋口
橋口
“くふ楽”さんは焼き鳥がメインの日本食レストランだと認識しているのですが、インドでの食材の仕入れに関してどのような戦略を取っておられますか?

・本多さん

そうですね、まずメインとなる日本食として焼き鳥を選んだのはエンターテインメント性があったからです。

仕入れに関しては、コスト計算を一通りして利益の出る構造になっているのであれば、費用を抑えて売り上げを出す以上に、『お客様の満足度が上がるメニュー』を開発したいと考えています。

実際の調達方法としては、現地の農家や肉屋などの各種ベンダーに足を運んで、質の良い食材を仕入れるといった方法で調達しています。

前提としてインドへの食材の輸入は、国内における雇用機会の保護、製造業の強化などを背景としたメイク・イン・インディア政策によって非常に限定的になっているのが実情です。

その上で、お店のコンセプトにあった食材を探すには現地のベンダーに自ら足を運んで、自分たちで作れるものは作るのが良いかもしれません。

具体的な例を出すと、“くふ楽”ではマヨネーズや焼き鳥のソースに関して自社開発を行っています。

 

2-4. 経営上の課題

・筆者

橋口
橋口
インド市場での飲食店経営において課題であると感じる部分はどこでしょうか?

・本多さん

課題と感じる部分で言うと、やはり州によってライセンスの取得方法が違っていたり、酒類の提供が禁止されている地域もあったりと法律が変わってくるところですかね。

そして、店舗の内装工事や営業許可の遅れによる、開業の遅延も難しいところではあります。

メニュー開発やスタッフ教育のような部分は日本人に任せることが出来ますが、どうしてもローカルな法律規制やプロジェクトの交渉といった点は、信頼できる現地のインド人パートナーの方に頼むのが良いかもしれません。

もし、個人で法律関連の業務もプロジェクト進行における交渉もやっていくとなると、長期間インドに住み、ガンジス川に流されても良いと思える程の覚悟を持って現地の商習慣に慣れる必要があるかと思います。(笑)

 

2-5. 成功の秘訣

・筆者

橋口
橋口
インドの飲食業界における成功の秘訣は何だと考えておられますか?

・本多さん

成功の秘訣ですか…(笑)

まだ、私自身成功していると思っていないのですが、インドの飲食市場が5年10年と大きく変化していく中、自分たちの店が先行して出来ることからスピード感を持って取り組んでいくことが大事ではないかと考えます。

居酒屋文化というものがインド全体で認知されるようになれば、当然日本の大手居酒屋チェーンも益々本腰を入れて進出してくることでしょう。

その際に、日本食を提供する他の企業様とマーケットのシェアを争うこともあるかもしれません。

しかしながら、結局のところは『お客様に喜んでもらえる』ということを最優先した堅実な成長が最も効果的かつ成功に繋がる経営だと思います。

 

2-6. 将来の展望

・筆者

橋口
橋口
今後の“くふ楽”インディアにおける事業展開と本多さんの将来的な展望について教えて頂きたいです。

・本多さん

“くふ楽”インディアの展望としては、役員会で1年に2店舗ずつ増やしていくということが決定しているので、その計画を進めながら“くふ楽”インディアのCEOをインド人の方に任せていく方向で進むはずです。

おそらく、外国人である日本人がCEOという立場から指示を出し続けたとしても、事業自体の規模は拡大しづらいと感じています。

やはり、責任のあるポジションをインド人経営者の方に任せることで彼らの能力を存分に発揮してもらうことが最適解なのではないでしょうか。

それに、私の好きなことは0から1を創り上げていくことなので、将来的な日本とインドの躍進のためにも、お互いの文化について理解し合える機会を多く創っていきたいと思いますね。

そうして、両国がお互いの強みを活かして助け合える関係性が築ければ、経済的、社会的にも皆が幸せな方向に進むのではないかと期待しています。

 

3.筆者による気づき

実は、今回インタビューをさせて頂いた“くふ楽”インディアさん、バンガロール店には筆者である私も幾度か食事をしに訪れたことがあります。

立地もバンガロールの中心地にあり、カジュアルなシーンで非常に通いやすいお店でした。

“くふ楽”インディア バンガロール店の立地を表す地図

(“くふ楽”インディア バンガロール店 立地)

 

店内の雰囲気はとても、清潔でお店に入った瞬間から「いらっしゃいませ!!」という活気のある声で出迎えてくれます。

その掛け声に慣れている日本人からすると、一瞬で“日本の居酒屋”に来たという気分になるのは間違いありません。

くふ楽の店内が満席になっている様子

(満席時点の店内)

 

そして、注文の際には座って聞いてくださり、とても親近感がわきやすいスタイルの接客を受けることが出来ました。

少し酔いが回ってきてお箸を落としてしまった際にもスタッフの方が直ぐに替えのお箸を持って来てくれるなど、日本の居酒屋でも珍しい程の接客レベルです。

くふ楽のスタッフが接客をしている様子

(スタッフの方による接客)

 

注文した料理は見た目から味までとても満足のいくもので、私は5本の焼き鳥盛り合わせを頂きました。

インドで出回っている深みの少ないマヨネーズとは異なり、慣れ親しんだ日本風のマヨネーズ+ソースで最高の味が生み出されていました。(個人の感想です)

キッチンの中で作っているスタッフの方の中には日本人らしき人は見当たらなかったのですが、完成度の高さから提供の速さまで何の違和感もなく、徹底された教育が行き届いているのだろうと感じざるを得ません。

くふ楽で提供された料理の写真

(注文した料理)

 

本多さんが言われていたエンターテインメント性も随所に見受けられる機会があり、特にドリンクを頼む際のジャンケンでグラスのサイズが変わるサービスは楽しめて且つ、お得感も味わえます。

ただ商品を提供するだけでは創り出せない価値がその1つのサービスに凝縮されているのかなと、お客さんとスタッフの方が一緒に笑い合う姿を見て感じました。

(ジャンケンに勝利した場合のグラス)

 

4.まとめ

今回のインタビュー記事は株式会社サブヒロハマコーポレーションCEO本多康二郎さん協力のもと、制作することが出来ました。ご協力ありがとうございます。

日本から遠く離れたインドの地で、これ程までに日本の誇れる文化を広めてくださっている本多さんには、1人の日本人として心から感謝いたします。

実は、筆者である私も日本では東京の焼き鳥居酒屋でアルバイトとして2年ほど働いていました。

そこで感じることですが、やはり現場でお客様を接客しているスタッフの方々が笑顔で楽しそうに働いている飲食店は活気があり人を魅了する力があります。

“くふ楽”インディアさんの雰囲気は、まさにその活気溢れる店舗の代表例だと思いました。

ぜひ、読者の皆様も、インドに訪れた際は“くふ楽”インディアさんの店舗で日本の居酒屋を感じてみてはいかがでしょうか。

 

※本記事の参考サイト一覧

(*1) Company – 株式会社 KUURAKU GROUP

(*2) サブヒロハマコーポレーション (sub-hirohama.com)

(*3)インドで13年間、スリランカで4年間、 事業を展開する本多康二郎さんにインタビュー | スリランカ観光情報サイト Spice Up(スパイスアップ)

(*4) Hirohama | Hirohama India Private. LTD. (hirohama-india.com)

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