ところが、インドには映画のダンスよりさらに歴史の長い「インド古典舞踊」が数多く存在します。そしてインドの古典舞踊は、映画の中で踊られていることもあるんですよ。
インド8大古典舞踊
インドには地域によって数多くの古典舞踊が存在しますが、「8大古典舞踊」と言われる代表的なものがあります。
インド8大古典舞踊
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すべてを説明すると長くなるので、今回は以下の3つを紹介します。
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では、それぞれの解説にいきましょう!
1、カタック(Kathak)
カタックダンスは紀元前5世紀〜紀元5世紀頃に北インドで発祥し、インドの叙事詩や古代神話の物語を伝える語り部「カタカ(Kathakars)」が始まりだとされています。
もともとはヒンドゥー教の神様や神話を伝える役割だったカタックですが、16世紀頃のムガル帝国発展の中で宮廷舞踊として進化していきます。そのため、ヒンドゥーとイスラム両方の様式と文化的要素を持ったものとなりました。
カタックダンスは他の古典舞踊と異なり、基本的に直立姿勢で踊ります。足に「グングル」という鈴をたくさん巻いて、軽快に足を踏み鳴らしながら踊るもので、フラメンコのルーツになったともいわれています。激しくステップを踏みながらも、上半身は優雅に、そして旋回が多いことが特徴です。
そしてカタックダンスを語る上で欠かせない存在が、現代カタックを完成させたと言われるインド人間国宝の「Pandit Birju Maharaj(パンディット・ビルジュ・マハラジ)」です。
↓ビルジュ・マハラジのパフォーマンス
ビルジュ・マハラジは、カタックを洗練された舞台芸術へ進化させた立役者ともいわれており、伝統舞踊の枠に留まらず、インド映画でも多くの振付や作曲をしています。
↓映画『Devdas』より
このダンスシーンは、ビルジュ・マハラジの振付、作曲です。ビルジュ・マハラジは、残念ながら2022年1月に84歳で亡くなり、インド中が彼の死を悼みました。今後は彼の子どもや弟子達がインドのカタック界を引っ張っていくことになるでしょう。
2、バラタナティヤム(Bharatanatyam)
インド南部のタミルナドゥ州を発祥とするバラタナティヤムは、インド古典舞踊の中で最も古い歴史を持つといわれています。紀元前1000年頃からヒンドゥー寺院の儀式で、デーヴァダーシー(巫女)によって踊られていた奉納舞踊だったようです。
バラタナティヤムに限らず、インドの古典舞踊はイギリス植民地時代に冷遇され、衰退していきました。しかし1930年代、インド独立運動の気運の高まりと共に「自分たちの文化を取り戻そう」という動きも大きくなり、ルクミニ・デヴィ・アルンデールらによって復活。ヒンドゥー寺院以外の場所にも広がっていきました。
バラタナティヤムのパフォーマンス。こちらはシバ神の踊りですね。
バラタナティヤムは足を横に大きく開いた中腰が基本姿勢で、足を床に打ち付けてステップを踏んでいきます。手のしぐさ(ムドラ)や目の動き、表情で豊かに物語を表現します。
↓映画『Chennai Express』より
曲の最後に、バラタナティヤムを踊っているシーンが登場します。映画の舞台であるチェンナイは、バラタナティヤム発祥の地タミルナドゥ州にあるので、このシーンが入っているのでしょうね。
3、オディッシー(Odissi)
インド南東部のオリッサ州に伝わる古典舞踊で、日本語では「オディッシー」または「オリッシー」と表記します。オリッサ州はジャガンナート神信仰の強い地域でもあり、オディッシーではジャガンナート神やクリシュナ神などの神話を表現することが多くあります。
↓オディッシーのパフォーマンス
オディッシーは「動く彫刻」とも言われ、流れるような動きと優雅なポーズが特徴です。オディッシーの代表的なポーズである「トリバンギ」は、「体の3か所を曲げる」という意味で、非常に女性的な美しいポーズです。トリバンギはこの動画でも見られますね。
衣装はバラタナティヤムと似ていますが、オディッシーは頭に白い飾りを付けているのが特徴です。
↓映画『Bhool Bhulaiyaa』より
男女のダンサーの掛け合い、スピーディーな展開に目を奪われますね。
これまで紹介したように、インド古典舞踊は映画の中でも時々見られます。YouTubeでも、古典舞踊を検索するとたくさん出てきます。また、インド国内ではコンサートや野外の無料イベントでも時々見かけることもありますよ。
インド古典舞踊は動きも美しいですが、何と言っても表現力が魅力だと思います。生で見ると、ダンサーのエネルギーがダイレクトに感じられるので、ぜひ一度見てほしいですね。インド古典舞踊からも、インドの文化や魅力を感じていただけたらうれしく思います。