考え方も、行動パターンも、生活様式も、時間の流れも、、、何から何まで日本のそれとは異なる国インド。
私の祖父は某商社の初代支店長として戦後間もないインドに長期駐在をしていましたが、その当時から「インドの人は働かない」と祖母や母に冗談を交えてよく言っていたようです。(戦後の高度成長期を支えた祖父の世代からすると、今の私たちが感じるよりもっとだったと思います。)
おそらく今回の記事のテーマであるインドで生活をするうえで、避けて通れない永遠の課題の1つ「どうすればインド人と上手に付き合うことができるか?」は今に始まったことではないのでしょう。
人口の数だけ仕事あり
人口世界第2位、約14億人の国インド。カースト制度が廃止されたとは言え、今もインドでは仕事の内容が細分化されていて人の数だけ仕事があると言っても過言ではないと思います。
私の周りを見るだけでも、仕事場では事業所内で働く各部署のオフィスワーカーや外回り営業担当者の他にも、守衛さんやお茶汲みボーイや雑用係に掃除担当のメイドさん。
約束遵守は可能か?
よくインド人は時間を含め約束を守らないとか、謝らないと言われてますが、実際はどうなのでしょうか?
例えば、私のオフィスで働くインド人A君。
今日の終業までに私がやっておいてほしいことを朝の段階で告げました。私ははっきりと「今日、仕事が終わるまでにやっておいてね。明日必要だから。」と伝え、A君は「はい、絶対に。」と答えます。 そして終業時間になって「あれ?あの仕事終わってる?」と聞くと「まだです。だけど明日には提出できます。」とA君は悪びれる様子もありません。 彼の理論では「明日必要な時間までに仕上げておけばよいだろう。」と言った感じかと思います。 最近は日本でも残業を極力しないさせないという機運が高まっていますが、インドでは残業をしてまで「言われた仕事を仕上げておかなければ!」というような気持ちは最初から無いようです。 |
家に出入りしているメイドさんについても「明日もいつもの時間通り来るよね?」と本日の仕事終わりに確認し、彼女も「はい、絶対に来ます。」と言って帰宅します。(いちいち確認しておかないといけないタイプのメイドさんがいるのも確かです。)
しかし翌日約束の時間になっても全く来る気配がないので私から電話をしてみると、全く悪びれることなく「今日はいけません。」と言います。しかも電話をするお金がないという理由でこちらから電話をしない限り連絡してきません。 日本から来た私にしてみれば、自分が相手に絶対と言って何かを約束すれば、それは絶対だと思うのですが、彼らはあの時は絶対と言ったけどその後状況が変われば絶対なんてないと思っているのか、こちらが頭を抱えてしまいたくなることもしばしばです。 |
このようなインド人が約束を守らない様々な問題は、主人のクリニックのスタッフ達にも当てはまります。
そこで、
- インドではあらかじめ時間のサバを読む。
- 「彼らの絶対は絶対でない」とはなから相手の言葉を100%信じず、ある程度のバックアッププランを持っておく。
- 「あー、またか!」くらい少し肩の力を抜いて、インド流刹那的思考でいる。
- 最終的には「これが変わらないインド!」とすべてを受け入れ開き直って自分の頭を無理やりポジティブに変えてしまう。
など少しでもストレスを軽減することができれば、少しは気持ちが楽になるかもしれません。
モティベーションの高め方
とはいうものの、日本人から見たいわゆる「約束を守らない、働かない、そして謝らないインド人」のモチベーションはどうすれば高められるのでしょうか?
国や人種を問わず、私たちは皆自分が認められれば決して嫌な気はしませんから、相手が本当に良いパフォーマンスをすれば「ありがとう」とか「前回の~~は良くできていたね!」と一言添えるのは、1つの手です。
これはいかにもインド流ですが、チップをあげるという方法もあります。このチップの渡し方には少しコツがあり、通常私たちは良くできた労いの意味でチップを渡すと考えますがモチベーションをあげるためのチップは相手に気合を入れて働いてほしい時に前もって渡します。
このチップはお金と言う場合もありますが、そうでない場合もあります。例えばお手伝いさんのような場合、自分が持っている衣類で、もう着ないと思っているけど逆に相手が欲しがっているようなものです。
しかし、この方法は頻繁に使うわけにはいきません。相手が調子に乗り常にチップを要求するという逆効果に陥る可能性があります。
その他には、時には相手が普段自分でできないような経験を与えつつ、間にメンターを置くという方法です。
例えば、私の買い物付き添い係の女性ですが、ある時から主人と私が少し遠出する時にしばしば同行させるようにしました。私と主人にとっては些細な遠出であっても、彼女には普段は自分ではできないような遠出であったり、経験ができることから喜んでついてきてくれます。
そして行く先々で私たち夫婦の知り合いで彼女のメンターになれそうな立場の人々に、私たちがいないところで彼女に期待していることや彼女が頑張れば思った以上に良いことがあるなど、じっくり話てもらいます。すると彼女は自分が認められていると感じてくれ、その後の働きっぷりが良くなりました。
マウントを取られないためには
しかし、そんな風にこちらが良かれと思って取った行動に対して、こちらの意に反してマウントを取られることもあります。そこで、気を付けるべき点をいくつか考えてみました。
日本人は人を使い慣れてないと言われることがあります。時には「ありがとう」、「ごめんね」と口癖のように繰り返してしまうことがあるかもしれません。インドでは大抵の場合、下の立場の人が上の立場の者からこのような言葉を言われ慣れていないため、最初の頃は照れ臭そうに「そんなこと言わなくても大丈夫。当たり前ですよ。」と言いますが、これが言いすぎると次第に気分が緩んでしまい軽く見られたり、感謝されているというありがたみが薄れてしまいます。
次に、言葉の壁や文化の違いにより「この人は分かってないだろう」と思わせることを避ける、ということです。そういう意味ではその地の言葉や文化、考え方をある程度学んでおくのが良いでしょう。相手はこちらがある程度わかっていると思えば、これらが原因のマウントは取りにくくなると思います。
そうなれば残念ですが、いつまでも引きずらず次へ向けて前進しましょう。人との関係を軽視するわけではありませんが、これだけ人口の多いインドです。数打ちゃ当たるかもしれません。そして本当に認めてあげれるべき人がいれば、きちんと育て認めてあげることを忘れてはいけないと思います。