インド東部のウェストベンガル州の州都コルカタは、1690年にイギリス東インド会社の商館が置かれてから1911年にイギリス領インド帝国の首都がデリーへ遷都するまでイギリスのインド支配の中心都市でした。
確かに戦前のコルカタはインドで最も発展した都市でしたが、戦後にコルカタの原料供給地である東パキスタン(現バングラディッシュ)がインドから分離独立したことでコルカタの工業は大きなダメージを受けました。
それに加えて、東パキスタンからヒンドゥー教徒の難民が大勢流れてきたことで社会不安を招き、多くの企業がコルカタからムンバイなど他都市へ移転したことにより経済的に衰退してしまいました。 それでも、コルカタは1984年にインド初の地下鉄が開業するなど、戦後も一定期間は大都市としての地位を維持してきました。 しかし1977年から2011年までインド共産党マルクス主義派がウェストベンガル州の政権を担ったことで更なる停滞を招き、2000年頃から始まるインドのIT関連産業の成長にも取り残され、ムンバイ、デリー、バンガロールなどの都市よりも大幅に遅れを取ってしまいました。 現在のコルカタは他の都市に追い越され、現在のインドビジネスで話題に上ることは殆どありませんが、その分だけ古いインドの雰囲気を最も色濃く残した都市となっています。 |
コルカタには人力車、路面電車を筆頭に、他の都市では消滅した昭和時代のインドが残っています。
コルカタには歴史ある街なので、「インドっぽさ」を感じたい旅行者にはとてもオススメです。
本記事では、コルカタ旅行で見ていただきたいスポットをご紹介します。
コルカタ街角散策の魅力
グルガオンやバンガロール、ハイデラバードなど、近年になって発展した都市は車での移動を前提としているため道幅がとても広く、徒歩での散策は大変です。
一方、オールドデリーやバラナシなど古くからの都市にある下町は車移動を前提としていないため道幅が狭く、徒歩での散策に適しています。
青空床屋も至るところで見られます。
せっかくなので私も青空床屋で散髪してもらいました。100ルピー(約150円)でした。価格表はなかったので、実際の値段は分かりません。
インドというと、日本では見られない刺激的な光景を見ることができ、人生観が変わるというイメージがあるのではないのでしょうか?
コルカタではどこを歩いても古き良きインドの下町を楽しむことができますが、もし迷うようであれば特にオススメなのはナコーダ・マスジットの周辺です。
インドの多くの都市では三輪のオートリクシャを見かけますが、コルカタではクラシカルなイエローキャブが走っています。
インド唯一のコルカタの人力車
コルカタでは人力車が走っています。他の都市では自転車や三輪自動車などのタクシーが一般的ですが、インド国内で現役の人力車が残っているのはコルカタだけだそうです。
地元の方の話によると人力車の新規ライセンス発行は既に停止されていたらしいので、人力車を引いている方は高齢の方が多く、いずれ消滅する運命にあります。
私が訪問した2020年時点ではまだまだ人力車は数多く見かけ、元気に走っているので、10年以上は健在かと思いますが、将来的に減っていくのは避けられないと思うので、乗りたい方はぜひお早めにコルカタをご訪問ください。
なおメーターなどはないため値段交渉が少し大変で、外国人観光客だとわかると高額な値段を言ってくる可能性があります。
トラブルを避けるために、乗る前に行先と値段を確認することがオススメです。もし「行き先は決まっていないが、とりあえず乗りたい」という場合には、100ルピーだけ渡して「行けるところまで行ってください」と伝えても良いかも知れません。
インド唯一のコルカタの路面電車(トラム)
人力車と同じく、路面電車もインドではコルカタにしか残っていません。コルカタの路面電車はアジアで最古だそうで、イギリス領インド帝国時代の1880年に馬車鉄道として開業し、1902年に電化しました。
現在は路線は大幅に縮小されており、本数も少ないため「市民の足」とまでは呼べない状況です。
コルカタを歩いていても路面電車を見かけることは滅多になく、時刻表も存在しません。
路面電車の線路と駅はGoogle Mapに表示されますが、Google Mapに「駅」と表示されている場所にもプラットフォームなど駅らしい目印は何もなく、しかも誰も待っていないため、本当に路面電車が来るのか、どこで止まるのか確信が持てません。
私は街を歩いていたら路面電車が停車し、人が乗降しているところ見かけました。
路面電車の終点駅まではあと5駅ほどなので、反対側で待って入れば先ほどの車両が折り返して来るだろうと待っていたのですが、30分以上経っても先ほどの折り返し電車は来ません。
そこで、線路を辿って路面電車の終点駅まで歩いて行ったところ、電車は車庫に閉じこもって出て来ません。
車庫の入り口に係員が立っていたので、係員に「次の電車はいつ出てくるの?」と聞いたら「知らない。そのうち動くから待ってろ」と言われました。
ここで現地人らしきインド人グループがやってきて、係員とケンカを始めました。
(内容は聞き取れませんでしたが)私と同じく「いつ路面電車は出るのか?」「早く電車を動かせ」と言っているようでした。
係員に権限がないことが分かると、そのインド人グループは更なる交渉のため?に車庫の中へ入っていきました(この写真は、そのインド人グループが電車の車庫へ入っていく時の様子です)。
しかし15分後、そのインド人グループは怒った様子で車庫から出てきたものの、路面電車は出てこなかったので、交渉には失敗したようです。
日本では考えられないことですが、路面電車の線路上で駐停車をしている車が多く、電車は立ち往生してしまうので、路面電車の運転手は常に大声を張り上げて怒鳴り散らしながら運転していました。
コルカタの路面電車は、世界各地で増えている近代的なLRTではなく、とてもレトロな吊りかけ駆動方式の鋼製車です。
しかし路面電車は明らかに交通の邪魔になっているので、こちらも人力車と同じく将来的には消滅してしまうかも知れません。
ヴィクトリアメモリアルホール
モイダン公園ではイギリス統治時代の建物をみることができます。
モイダン公園の中心はウィリアム要塞というイギリスのインド支配の拠点なのですが、現在は政府が使用しているため入場できません。
モイダン公園で一般人が観光できる場所のうち目玉スポットとなるのが、ヴィクトリアメモリアルホールです。
ヴィクトリアメモリアルホールは、1905年から1921年にかけて、ヴィクトリア女王を記念して建てられました。私が訪問したのは2019年12月でしたが、2021年12月に訪問した方に確認したところ展示内容が変わっていたそうです(後述)。
内部は吹き抜けのホールになっており、建物を見るとインドであることを忘れてヨーロッパへ来た気分になります。
建物はヨーロッパ風ですが、観光客はほぼ全員インド人なので、とても不思議な感覚を味わいます。
ヴィクトリアメモリアルホールにはイギリス東インド会社の歴史を展示した博物館が併設されていました。
この博物館はイギリス統治時代の残酷さを訴えるわけでもなく、インドの独立指導者の偉大さを称えるわけでもなく、淡々と史実を列挙していたのが印象的でした。
イギリス統治時代の生活や産業などを深く理解することができました。
なお私が訪問したのは2020年1月でしたが、2021年11月にヴィクトリアメモリアルホールへ訪問した方に確認したところ、インドの独立運動家であるチャンドラボースを中心とした展示内容に変わっていたそうです。
ヴィクトリアメモリアルホール
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古き良きインドを感じたい方はぜひコルカタへ
コルカタは日本でいうと江戸時代から昭和時代にかけてインドで最も栄えていた都市でした。
コルカタは発展から取り残されてしまった分、古いインドの雰囲気を感じることができます。
コルカタにはマザーテレサハウスでのボランティアなど、他にも貴重な経験を出来る場所がありますので、ぜひコルカタをご訪問ください。