私は常々、色んな人から「インドのどこに住んでいるの?」「グジャラート州のどこに住んでいるの?」と聞かれれば、「西インド、グジャラート州のとある片田舎だよ。(リアルな田舎ではなく、あくまで片田舎です!)」と答えています。
これは私の主観かもしれませんが、私を訪れたことのある私の妹夫婦にも「インドのザ・片田舎」と言われているので、きっとそうなのだろうと思います。一般的に日本からの観光ではまず訪れることはない場所だと思います。
インドに、いやグジャラート州にどんな形であれ居住、滞在している方でもまず立ち寄ることすらないかもしれません。しかし、今や私にとってそんな片田舎は愛着のある第三の故郷になりつつあります。
アナンドってどこ?
まずは、アナンド県の基本情報である「アナンドってどこ?」からご紹介します。
アナンド県は約366の村、8つの市から構成されており、総面積は約3,204 ㎢、人口約210万人(2016年調べ/アメリカ合衆国ニューメキシコ州とほぼ同じ)です。
アナンド県は1997年にケダ県から分かれた新しい県ではありますが、ここ10年ほどで目まぐるしい経済発展を遂げているコスモポリタンシティであり、人口はまだまだ増加傾向にあります。
さらにアナンド県はアナンド県の中心アナンド市からカンバット市(アラビア海の湾のうちの1つであるカッチ湾が面するエリア)まで車でも軽く90分以上かかる非常に大きな県です。
このプロジェクトを通して収穫された野菜は、インドのNGOで女性の雇用増進や独立をサポートするSEWAが中心になり、主にアメダバードやムンバイの高級食材店で販売されています。
アナンドはNRI(Non- Resident Indians)がNo.1!
一説には、2人に1人は必ずNRIだというのです(これがコスモポリタンシティと呼ばれる所以です)。
特にアナンド県のペトラッド市にあるダルマージ村は、たかだか約1,700世帯(人口1万人強)にすぎない小さな村にもかかわらず、13種の銀行の支店が揃い、インドで一番NRIが多く最も裕福で発展した村として知られており、ダルマージ出身のNRIが海外で稼いだお金を村に持ち帰り、銀行に預金している総額は1,000Crore(日本円で約155億円/1ルピー=1.55円)を優に超えるというのです。
確かに私の住むアナンド市でも周りを見回せばNRIがゴロゴロ。私の住むソサエティは全12戸ですがそのうち5戸はNRIが所有し、賃貸するか一時帰国の際に自分たちが利用するという目的で所有しています。
残りの7戸も6戸が家族の一部がNRIという家庭ばかりです。私の夫が経営する歯科医院の患者さんもアメリカ、イギリスは当たり前でカナダ、ドイツ、フランス、ノルウェー、ドバイ、ウガンダ、ケニア等々、NRIが非常に多いためNRI向けの分院まで開院しています。
我が家に勤めるメイドさんの従兄ですら、偶然にも非常に珍しいケースですが、日本にて就労&居住しているNRIです。
町中には「Study & Settle in UK, USA, Australia, New Zealand, Singapore!」といったように海外への留学から移住を後押しするエージェントがひしめき合っており、NRIになることを夢見る老若男女が後を絶ちません。
片田舎なので日本への認知がほとんど無いため、Study & Settle in Japanをうたうエージェントがないのは幸いだと思っていますが、代わりに日本に興味をもつ方々は直接私の夫へ連絡をしてきて「いくら払えば日本への就労ビザを手に入れられるか?」という質問が飛んでくることがあるのには閉口してしまいます。
こういう海外移住を後押しするエージェントの中には、相談料と称して2Lakh ~3Lakh (1 lakh=100,000ルピー/約31万円~47万円)を請求し、「エージェントにお金を払えば、100%NRIになれる」といかにも胡散臭い謳い文句を掲げる為、このような質問が飛び出してくるのです。
さらには、結婚を通してNRIになることを目指す人々もいますし、一部家族が先にNRIになりその家族のツテでNRIを目指す人もいます。そんなこんなで、最近では2人に1人といわずアナンドの人口と同じだけのNRIがいるともいわれます。
この町に住む者にとって少し不利なのは、このようにNRI人口が多いため、アナンド市の物価は不動産価格も含め、アメダバードやバドーダラのような都市部より高いという、ちょっとしたねじれ現象のような状態にあることかと思います。
しかし、アナンド市には近隣の都市にあるようなお店(インド系全国チェーン含む)はほぼ揃っています。
NRIが帰省してくる冬(11月下旬~3月上旬)は、大小含め様々なお店だけでなく、結婚式にいたるまで大きなビジネスチャンスなのです。
アナンドは何と、乳製品会社Amulの発祥の地!
さて、そんなこんなのアナンド県ですが、アナンド県が何よりも有名なのは世界最大級のミルク及び乳製品会社でありインドが誇るAmul発祥の地だということです。
Amulは正式名称をAnand Milk Union Limitedといいます。元はアナンド県のカイラ地区ミルク製造組合(The Kaira District Co-operative Milk Producers’ Union)が前身であり、その当時の組合長であったTribhuvandas Kishibhai Patelが、1946年にSardar Patel指導の下にAmulを設立。1949年に今日インドにおける白革命の父( “Father of the White Revolution”)と呼ばれるDr.Verghese Kurienを招き入れました。
そしてDr. Kurienの多大なる努力の末、今日のAmulというブランドが確立され、インドを世界最大のミルク製造国におしあげました。
ちなみに、Sardar Patelもまたアナンド県カラムサッド市出身です。
彼はジャワハルラール・ネルー初代首相の下で副首相・内務大臣を務め、インド・パキスタン分離独立に際しては多くの藩王国を巧みな手腕でインドに帰属させ、インドの鉄の男と呼ばれ、グジャラート州の新観光名所ともなっているStatue of Unityのモデルとなっている人物です。
Amul Dairy Factory & Dr. V. Kurien Memorial Dairy Museum
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ミルク工場も博物館も一般に公開されています。さらに工場の外側にはAmul直営のスーパーマーケットやレストラン、乳製品売り場、チョコレート売り場があります。このAmulが運営するスーパーマーケットではマグカップやキーホルダー等のAmulグッズが販売されていることもあります。
本社前にあるAmulレストランさらに2018年にAmulはアナンド県モガール村にAmul Chocolate Factoryをオープンさせ、ナレンドラ・モディ首相も記念講演及び視察に駆け付けました。
この工場はNational Highway 64でアナンドを超えバドーダラへ向かう道沿いにあり、大きなインド国旗が空を舞う様子とともに見ることができます。
また、こちらもAmul Chocolateのことが学べる博物館を設置しており見学が可能となっていますからアナンドの見どころの1つだと思います。
Amul Chocolate Factory
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さらに先述したSardar Patelの、記念公園である”Sardar Patel Memorial”が彼の出身地であるカラムサッド市にあり、こちらもとても綺麗に手入れされた庭園です。
Sardar Patel Memorial
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アナンドの見所「ヒンドゥー教保守のスワミナラヤン派のお寺」
インドにはヒンドゥー教をはじめとしたお寺が無数にあり、それらを見どころとして挙げていくとキリがないのですがAnandの見どころとして1つだけヒンドゥー教保守のスワミナラヤン派のお寺を挙げておこうと思います。
スワミナラヤン(スワミナラヤン派の開祖)の生涯の間に、スワミナラヤン派は信者の神への献身的な崇拝を促進するために6つのお寺を建立しました。スワミナラヤン派で有名なのはデリーの観光地として有名なアクシャルダムです。6つのうちの1つがAnand県ケダ地区のVadtalです。
そのため、この寺院はスワミナラヤンサンプラデーの巡礼者の中心であり常に人々で溢れ門前のマーケットには活気があります。
また、こちらの寺院では、少しの金銭を払うだけで誰でもスワミナラヤン派のお料理(グジャラートタリー)を食べることができます。(スワミナラヤン派はニンニクと玉ねぎを食することを禁止していますから、こちらで食べることができるお料理はニンニク、玉ねぎ無しです。)
Vadtal Shree Swaminarayan Mandir
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なかなか日本からの観光で時間を使って訪れる機会はないかと思いますが、今回の記事を通してちょっとしたバーチャルツアーとして楽しんでもらえたらと思います!