インド北東部は、アッサム州、メガラヤ州、ナガランド州、マニプール州、ミゾラム州、トリプラ州、アルナーチャルプラデシュ州の7州から成り、これらを合わせてセブンシスターズ(7姉妹州)と呼ばれています。
セブンシスターズには数百の言語と100以上の民族、これに加え、他州から移住してきたインド人も混在しています。
ここを訪れる人々は、インド北東部を「最もインドらしくないインド」と形容すると言われています。一歩そこに足を踏み入れると、インドとは信じられないくらい異なる文化、宗教観、食習慣、言語が存在しているからです。
インド北東部マニプール州ってどんなところ?ロンメイナガ族ってどんな人たち?
マニプール州にはおよそ33の部族が暮らしているとされ、同州で話されている言語は数あまたと言われています。州都インパールを除き、その面積の殆どが山岳地帯から構成されているので多くの住民たちは山岳地帯で暮らしていることになります。
マニプール州の山岳地帯の村ロンメイナガ族は、ほぼ同等の文化や慣習、食習慣などを共有するおよそ66のサブトライブから構成されているナガ諸族(英語でNaga)のサブトライブの1つで、主にアッサム州、マニプール州、ナガランド州に居住しています。
また、インド国憲法において政府指定少数部族の1つに制定されているサブトライブです。
ロンメイナガ族に拘わらず、マニプール州に暮らすほとんどの部族はモンゴロイド系に属しているので、彼らの顔立ちは日本人となんら変わりません。
深い森林に囲まれた山岳地帯では、食べられる物&動く物なら何でも食べる!
ロンメイナガ族は、その殆どが都市から遠く離れた山岳地帯に暮らしているため、生活の要となる食糧も必然的に山から得られるものに頼らざるをえません。
女性は薪拾いや食糧を探したり田んぼや畑の手入れをする為、男性は狩猟の為に殆ど毎日山に出かけます。
また、彼らのおよそ8割がキリスト教であり、ヒンドゥー教のような厳しい食制限がないので幅広く食を選択できることに繋がっています。
ロンメイナガ族の料理は、いたってシンプルです。主食は米で、主菜はガン(カレー)と呼ばれ、肉や野菜を煮詰めたもの、あるいは焼き炒めたものを用意します。
副菜はタムと呼ばれ、ナガ唐辛子と肉や魚、野菜などを混ぜつぶしたものを合せます。カレーはご飯と混ぜ合わせて食べるので、スープかグレイビーソース状のものです。
ロンメイナガ族の食事はこの3品ですが、クリスマスや新年の行事イベントでは主菜が2、3品あったりと豪華になります。
味付けは元来より塩や香草、ハーブのみですが、後述する発酵食品を出汁の代わりとして使用する場合も多いです。インド他州で使用されるマサラスパイスなどは、肉料理以外ではあまり使用しません。
食肉では、家畜化された鶏肉はもちろん、豚肉、牛肉は普通に食べられています。また、日常的ではないですが、狩猟で猪や地鶏、たぬきの類、うさぎ、ムササビなどの野生動物を捕らえた場合には、それらの肉も惜しみなく頂いています。
山間の小さな河川では、季節ごとに魚介類が捕れ、様々な種類の河魚、小エビ、タニシ、カニなどが食べられています。
野菜は特に山岳部で採られており、なかでも長いも、山菜、きのこ、からし菜などが多く食べられています。
主食であるお米は、ロンメイナガ族のほぼすべての家庭で自給されています。平野部で収穫されるお米は日本米に似ていて、弾力性があります。
山岳地帯では水源確保が難しいため、先祖代々殆どの家庭が灌漑無しの稲作をおこなっており、米や農作物の収穫後に田畑を焼払って、次期の栽培に肥沃な土ができるとされる焼畑農業を営んできています。
しかし、近年は、山岳中腹部や平野部の水不足を引き起こしている1つの原因として焼畑農業があげられ、さらに人口増加に伴って土地が少なくなっていることなども考慮し、この農法から代替農法を模索する声が徐々にあがってきているのが現状です。
冷蔵庫なんて無い…食品添加物も一切不使用!乾燥・発酵・燻製文化の発達。
辺り一面を深い森に囲まれたマニプール州では、近年よりインフラ整備が進んできています。下水道完備は未だなされていませんが、電気は30〜25年前などに比べると不自由しなくなったと言われています。
しかし、料理に関して言えば、グローバル化に伴って、ロンメイナガ族伝統の料理方法ではない、マニプール州外やインド国外から伝わってきた料理(油で炒める料理や麺料理など)が浸透し始めていますが、未だに化学調味料や保存料などの食品添加物にはあまり良いイメージを持っていません。
また元来、目と鼻の先にある自然の恵みを食糧として狩猟、採集、収穫し、なおかつ長持ちさせるように乾燥や発酵させて保存してきたロンメイナガ族の人々は、食糧を冷蔵・冷凍保存するという考えを持っていません。
ロンメイナガ族の代表的な乾燥・発酵食品を以下にまとめました。
たけのこ
からし菜
ローゼルリーフ(葉、種)
大豆
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これから先ロンメイナガ族の料理は時代の流れに沿って変化していくのだろうか?
古代より密林に生殖する植物や動物の恵みを受け、生活する為に必要な食糧を採集、捕獲してきたロンメイナガ族。
ブロイラーや地鶏、または豚や山羊を家畜として飼う家庭が増えたり、自然に生食していた植物などを採集するだけの文化から栽培して育てる文化へと、シフトチェンジしてきたと言われています。
ロンメイナガ族が古くから嗜んできた料理も、時代が変わってくるとともに変化してきました。まず、油を多く使う料理が増えてきました。
食肉を調理する場合も、塩と香草でシンプルに茹でていただけだったのが、インド他州のように油を多く使用する料理方法が主流になってきたのです。また、現在の若い世代は、ローゼルリーフの種から作る発酵食品の作り方を知らない人々が多いとか。
さらに、高速道路が整備されたことにより、近郊の中規模都市へのアクセスが楽になり、結果的に、乾麺や様々なスナック菓子などが大量に流入してきました。
ロンメイナガ族の暮らしに新しい価値観や物資が入ってきたことにより、彼らの生活スタイルや食習慣も少なからず影響を受けています。
新しい考え方も受け入れながら、今まで先祖代々伝わってきた方法も後世に伝えていってほしいと思います。