今はコロナウィルスにより気軽にインドへ旅行できませんが、日本国内でもインドを感じられる場所があります。
そこで本記事では、日印交流の歴史に触れつつ、日本国内でインドを身近に感じられる場所をご紹介します。
奈良 東大寺大仏殿
奈良の大仏は小学校の教科書にも出てくるほど有名ですが、実は南インドの僧侶菩提僊那が開眼供養の導師を務めました。菩提僊那は704年に南インド(英語版Wikipediaによるとタミルナドゥ州マドゥライ)のバラモンの家庭で生まれ、中国へ渡航しました。
唐の長安(現在の中国西安)で出会った日本人僧侶に日本への渡航を要請され、736年に日本へ渡航します。一説によると、彼はインドで文殊菩薩の霊験により「中国の五台山へ行けば文殊菩薩に会える」と聞いて中国へ渡航したものの、いざ五台山へ行くと「文殊菩薩は日本へ行った」と霊験を受けたため、ちょうど日本へ行きたいと考えていたところ、日本人僧侶と出会ったそうです。
日本へ渡航した菩提僊那は平城京最大の寺院だった大官大寺(現在の大安寺)で過ごし、752年に東大寺大仏の開眼供養で導師を務めることになります。
シルクロードやヒマラヤ山脈経由で唐へ渡航したインド人は大勢いたようですが、日本まで来たインド人がいたことは非常に驚きです。
共通語の英語がない時代に、どのように会話したのか?日本の気候や食べ物には馴染めたのか?など、とても気になります。
菩提僊那は760年に大安寺で亡くなりました。
東大寺大仏殿を参拝する時には、奈良時代の日本人とインド人の交流に思いを馳せてみてはいかがでしょうか?
奈良 東大寺大仏殿
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徳兵衛は江戸時代初期にベトナムやタイを経てインドのガンジス河まで到達し、日本へ帰国後旅行記を著しました。
江戸時代の人々にとって(今の日本でもそうかも知れませんが)インドは未知の世界だったので大変話題となり、「天竺徳兵衛」と呼ばれ歌舞伎の演目にもなりました。
東京 築地本願寺
東京の築地本願寺は外観が日本の一般的なお寺と大きく異なり、インドの古代仏教建築を模した外観になっています。これは戦前の日本人のインドに対する関心を象徴する建物です。
江戸時代以前、実際の日印交流は極めて限られたものでしたが、インドは天竺と呼ばれ仏教発祥の地として日本人の興味をそそりました。
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例えば鎌倉時代の法華経絵巻にはお釈迦様が法華経を説いたとされるブッダガヤの霊鷲山が描かれています。
このような背景があったため、明治時代になって海外渡航ができるようになると、仏教のルーツを直接知りたいと考えインドを訪れる日本人が増えました。
最も有名な例としては、漢訳の仏典に疑問を覚え原典の経典に触れたいと、インドやネパールを経由して当時鎖国中だったチベットを訪問した河口慧海が挙げられます。
ブッダガヤの記事でもご紹介しましたが、大谷光瑞は長年不明だった霊鷲山の場所を特定しました。
この大谷光瑞と、アジア各地を訪問した建築史家の伊東忠太が出会い、古代インドの仏教建築様式で建てられたのが現在の築地本願寺です。
築地本願寺へ行くと、戦前の日本人のインドに対する思いを感じることができます。
東京 築地本願寺
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東京 新宿中村屋
日本のカレーはイギリス経由で伝わったため、インド人にとっては違和感がありました。
そこで1927年、日本に滞在していたインド人ラス・ビハリ・ボースが新宿中村屋に純インド式カレーを提案し、これが日本で初めての本格インドカレーと言われています。
今では日本でもインドカレーは珍しくありませんが、昭和初期の日本人にとっては骨付きの鶏肉がゴロっと入った本場インドカレーは大きな衝撃だったようですが、当時から大好評でした。
新宿中村屋では今でも当時から変わらない骨付き鶏肉入りの純インド式カレー(税込1,870円)を食べられます。
東京 新宿中村屋
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東京 東銀座ナイルレストラン
今では日本全国どこへ行ってもインド人やネパール人が作るカレーを食べることができます。
インドカレー屋はラーメン屋などに比べて開業資金が安くて済むらしく、特に最近10年ほどで急速に増えた印象があります。
地方へ行くと、コンビニが見当たらない場所でもインドカレー屋を見つけることができます。
しかし日本で初めて本格的なインド料理専門店が開業したのは戦後のことでした。
それは、1949年に東銀座にオープンしたナイルレストランです(中村屋は「日本初の本格インドカレー」でしたが、インドカレー以外にも様々なメニューを提供しています)。
ナイルレストランは週末には行列ができる人気店で、特に創業以来変わらないムルギーランチ(税込1,500円)はオススメです。
東京 東銀座ナイルレストラン
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東京 西葛西
在留外国人統計によると2021年5¥6月現在、日本には約37,000人のインド人が滞在していますが、インド人の多い町として有名なのが西葛西です。
西葛西はITエンジニアを中心に約3,000人のインド人が滞在していると言われています。
インド人向けの食料品店やスイーツ店なども充実しており、グラブジャムンなども楽しむことができます。
店内へ一歩足を踏み入れると、インドの香りを楽しむことができます。
神戸北野 ジャイナ教寺院
日本で信仰されている仏教はインドから伝わってきましたが、現在のインドで信仰されているヒンドゥー教やジャイナ教の寺院を日本国内で見かけることはほぼありません。
そんな中、神戸北野の異人館街から西の方へ少し歩くと、日本では珍しいジャイナ教寺院であるバグワン・マハビールスワミ・ジェイン寺院があります。
コロナウィルスが広まって以降、2022年5月現在では関係者以外は立ち入り禁止となっていますが、従来は一般の方でも参観可能でしたので、コロナウィルスが収束したらぜひ訪問したいところです。
日本でビジネスをするインド人宝石商はジャイナ教徒が多く、その多くが東京御徒町で商売をしているため、御徒町界隈にはジャイナ教寺院の他にもジャイナ教徒向けベジタリアン料理店などもあります。
バグワン・マハビールスワミ・ジェイン寺院
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神戸 須磨寺
日本でもインド料理レストランへ行けば小さなガネーシャ像などを見ることはありますが、シヴァやヴィシュヌの像はなかなか目にすることができません。
そんな中、神戸市須磨区の須磨寺にある亜細亜万神殿にはインドでよく見かけるヒンドゥーの像が多数安置されています。
亜細亜万神殿は、須磨寺に寄進された東南アジアやインドの石仏の安置、及び、ネパール大地震被災者慰霊と復興を祈る場として、2016年4月25日に整備された新しい神殿です。
神戸 須磨寺
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大阪 国立民族学博物館
最後に、個人的にインドを最も感じられる場所としてお勧めなのが大阪の万博公園内にある国立民族学博物館です。
常設展では世界各地の文化を紹介しており、南アジアのコーナーでインド文化に触れることができます。
インドの結婚式の動画が流れていたり、サリーや三輪リキシャなどインドで毎日見かけるものを見ることができます。
インドだけでなく欧米、アフリカ、イスラム圏、東南アジアや中国・韓国など世界中の文化を見ることができる非常に面白い博物館なので、気軽に海外旅行気分を味わいたい方にオススメです。
大阪 国立民族学博物館
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日本でインドを感じたくなったら
日本とインドの交流は歴史が浅く、日本国内でインドを感じられる場所はまだまだ少ないです。
従って、日本にいる時に「インドを感じたい」と思ってもなかなか難しいのが現状です。
しかし、日本とインドは歴史的に問題を抱えていないからこそ、将来の関係発展に支障がないとも言えます。
これから日印交流が発展するにつれて、日本国内でインドを感じられる場所もどんどん増えていくかもしれません。
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