世界人口の約70%を占めるとも言われるBOP層
BOPとはBase of the Pyramidの略称ですが
三角形の所得ピラミッドの最下層にいる人々で、
一般的に一人当たりの年間所得が
3,000ドル未満(年収約30万円未満)
の人々のことを指します。
インドは、このBOP市場をターゲットとする
BOPビジネスとしても注目される国ですが、
インドでBOPビジネスを展開している外資企業として最も有名なのは、
家庭用消費財メーカーである英国企業ユニリーバ社でしょう。
日本ではダブやモッズ・ヘアなどの石鹸・シャンプーで有名ですが、
このユリニーバ社は、
インドにおいてビジネスと社会貢献活動を両立させた
という点においてインドのBOPビジネスの成功例として
よくメディア等で取り上げられています。
具体的には、石鹸で手を洗う習慣の無かったインドの農村部において
一回使い切りタイプの低価格な石鹸やシャンプーを販売することによって
彼らの健康を守り、そして、
その販売員として現地女性の雇用を生むことに成功しました。
(ひとつ3ルピー(約6円)のシャンプー↓)
先日、そんなBOPビジネスを
インドで展開している日系企業の駐在員の方に
直接お話を伺う機会がありましたので簡単にご紹介したいと思います。
現在、この企業さんは私が住んでいるチェンナイを州都とする
タミル・ナードゥ州に絞って販路の開拓をしておられ、
同州全土における販売拠点(提携先ディーラー)をひとつひとつ訪問し、
その数を着実に増やしてきています。
その背景として理解しておかないといけないのが、
店舗全体の90%超を占め、
インド全土に約1,400万店舗もあると言われる
小規模店舗“キラナ”の存在です。
(近所にある”キラナ”。いっぱいぶら下がっているのが一回使い切りタイプの商品です↓)
(インスタントコーヒー、洗剤、シャンプー、石鹸、虫除けクリーム等、様々です。)
この“キラナ”は家族が何世代にも渡って顧客であり続けているケースが多く、
コストが安い上に、得意先にはツケ払いや配達サービスまで行っています。
都心ではスーパーやショッピングモール等が増えてきていますが、
依然としてインド全人口の約7割が農村部に住んでおり
まさに地域社会に根を下ろしているこの“キラナ”を攻略しなければ
インドの小売業は成り立たないと言われている所以です。
提携先ディーラーはこの“キラナ”へ供給する卸売業者のことを指します。
通常ディーラーの役割として期待されている機能は
「販売」、「配送」、「回収」、「保管」の4つと言われますが、
この企業さんの話によると、
最も重要な「販売」をうまく機能させるのが大変なんだそう
実際にディーラー契約を交わしたとしても、
定期的にディーラーや農村地域まで足を運ばなければ
なかなか「販売」が進まないのだとか。
日々の泥臭い営業活動と同時に、
毎週月曜日は、全従業員が会社のロゴマーク付のTシャツを着て
自らが歩く広告塔として企業のブランド力とその認知度向上に精を出されています。
また、今回インタビューさせていただいた駐在員の方は
今年でインド駐在8年目とのことですが
毎週インド人従業員に対してメルマガを送付し、
企業理念や経営方針、ご自身の考え方、インド事業に対する使命感などを
8年間に渡って伝え続けてきたのだそうです。
最初は誰も着ようとしなかったロゴTシャツも
少しずつインド人従業員の態度に変化が見られるようになり、
今では全員がTシャツを着て一丸となって営業活動を行っているとのこと。
「結局のところ、インドという国は2~3年では何もできやしない」
「せっかくインドに来たのだからインド人相手のビジネスがしたい」
といった声はよく聞きますが、
自ら率先して行動し、地道な努力を続ける粘り強さがいかに大切か
そんな小売業ならでのインドBOPビジネスの醍醐味とその難しさを目の当たりにしつつ
それらを体現できる日本人が果たしてどれだけいるだろうか。
日本人よ、たくましく生きよ!