皆さんが「インド人」をイメージするとき、ひげを生やして頭にターバンを巻いた格好のインド人男性が思い浮かぶことはありませんか?
少数派ですが、首都のデリー周辺に集中的に住んでいることや見た目の特徴ゆえに印象に残りやすく、親しみを覚える人も多いのではないでしょうか。
そんなシク教徒の人たちの寺院であるグルドゥワーラーは、信徒以外の人でも参拝することが可能です。
とはいえ神聖な場所ですので、参拝する前にルールをよく知っておく必要もあるでしょう。
そこで今回は、シク教寺院・グルドゥワーラーの特徴や参拝時のルールについてご紹介します。シク教の人々に少しでも興味をもったなら、グルドゥワーラーにもぜひ足を運んでみてください。
グルドゥワーラー(シク教寺院)ってどんなところ?
シク教は15世紀頃に北インドのパンジャーブ地方で興った宗教です。
シク教徒は、元々は人間の指導者(グル)を信仰していましたが、10代目グルの死後は聖典である「グラント・サーヒブ」をグルとして信仰しています。
グルドゥワーラーには必ずその聖典が置かれていて、聖典の前で朝や夕方に礼拝が行われます。 |
基本的にはこの礼拝のための部屋さえあればグルドゥワーラーとしての機能を果たしているのですが、だいたいのグルドゥワーラーには「ランガル」という無料の食堂・台所がついています。
総本山と言われるのはパンジャーブ州のアムリトサルという街にあるハルマンディル・サーヒブ(別名「黄金寺院」)ですが、シク教徒が住んでいる地域であれば、どんなところでもグルドゥワーラーがあると言っても過言ではないでしょう。
シク教徒はインドだけでなく世界各国に移住していて、イギリスやカナダにもグルドゥワーラーがあります。
多くのグルドゥワーラーはシク教のマークの入った旗や看板を掲げているので、外から見てすぐに判断することができます。
礼拝は、グラント・サーヒブに書かれている賛歌をハルモニアムという鍵盤楽器やタブラという太鼓の伴奏付きで歌う「キールタン」という儀式がまず行われ、その後は説話を聞き、最後に祈りを捧げる、という流れで行われるのが一般的です。 |
小~中規模の寺院では1日2回あるいは3回と礼拝の時間が決められていますが、あとでご紹介するバングラ・サーヒブのような大きな寺院ではほぼ1日中キールタンを聞くことができます。
グルドゥワーラーでできること
シク教徒の寺院なのでもちろん礼拝が主な目的ですが、大きなグルドゥワーラーに行けば、それ以外にも様々な体験をすることができます。
インドと言えばカースト制度、と連想されることもありますが、シク教の開祖であるナーナクはそのカースト制度を批判しています(※現在のシク教のカースト制度に対する考え・態度は議論の渦中にあります)。
当時は異なるカーストの者が同じ食事の席につくことはタブーとされていましたが、ナーナクやその後のグルたちはその風潮を批判しました。
そうして3代目グルの時代に、誰もが平等に食事できる場としてランガルが設立されたのです。
このランガルは現在も中規模以上のグルドゥワーラーには基本的に併設されており、宗教や人種に関係なく誰でも利用することができます。
また、黄金寺院やデリーのバングラ・サーヒブのようにインド内外から観光客が多く訪れるグルドゥワーラーには、ミュージアムや売店も併設されています。
売店では軽食や飲み物の他、シク教の本やお土産になりそうな小物なども売っています。
こうしたランガルやその他のグルドゥワーラーの施設の運営はボランティアによって行われることが多く、一部のグルドゥワーラーでは、希望すればシク教徒でなくともボランティア活動に参加することができます。
参拝時のルールや手順
では、実際にグルドゥワーラーへ参拝する際にどのようなことに気をつければ良いでしょうか。
まずは服装についてです。
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次に、お祈りについてです。
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最後に、禁止事項についてです。
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必ずこれらのルールを守って参拝するようにしましょう。
デリーでオススメのシク教寺院 バングラ・サーヒブ(Bangla Sahib)
シク教の総本山であるハルマンディル・サーヒブ(黄金寺院)がもちろん一番お勧めなのですが、デリーにも素敵なシク教寺院がたくさんあります。
バングラ・サーヒブはニューデリーのほぼ中心地、商業エリアのコンノート・プレイス(Connaught place)から近いところにあります。
デリーメトロのパテール・チョウク駅から5分ほどの距離なので徒歩で向かうこともできますし、敷地の地下には巨大な駐車場があるため車で向かっても問題ありません。
魅力はアクセスの良さだけではなく、寺院自体の美しさや併設施設の充実度にもあります。
敷地内には綺麗に整備された広大な人工池があるので、礼拝に参加したあとは池の周りを歩いてみるのはいかがでしょうか。
この寺院は8代目グルがデリーで宿泊した際の跡地に建てられたと言われており、彼はこの地で病気の人々に水を分け与えて癒したという伝説が残っています。 |
そのほかにも寺院内には広々とした食堂(ランガル)や博物館があります。
ただ参拝するだけでなく、無料食堂でシク教の文化を体験することや、博物館で歴史を学ぶことも面白い経験になるでしょう。なお、食堂や博物館は営業時間が決まっていますが、寺院としては24時間開いています。(コロナ禍以前の情報です)
寺院の周辺にはインド内外から訪れる観光客向けに露店が軒を連ねています。シク教のグルのイラストが描かれた置物や賛歌が収められたCD、シク教のマークが入ったバンダナなど、シク教に関連した小物であればたいていのものを入手できます。
シク教の世界に飛び込んでみよう
日本ではまだあまり知られていないシク教ですが、インドにいるとあちこちで彼らの寺院を目にすることでしょう。
ただし、参拝時のルールを守ることはお忘れなく! 敬意を払いつつ、シク教の世界をぜひ覗いてみてくださいね。