象の頭に、ふくよかな人間の体で有名なガネーシャ神をご存じでしょうか?インドだけでなく、アジアの多くの国で愛されているガネーシャ神は、日本でも歓喜天として知られています。
今回のライターさんは、クリシュナ神の生誕祭ジャンマスタミーについて教えてくれた
ムンバイでは年に一度ガネーシャ神の誕生日を盛大にお祝いするガネーシャ祭りがとても有名です。今年もムンバイの町全体がガネーシャ一色に華やぎました。
ムンバイが最も華やぐガネーシャ祭りとは?
インドで最も人気の高いガネーシャ神は、象の頭部とふくよかな人間の体を持った神様です。インドだけではなくてアジア各国で人気が高く、ヒンドゥー教の国ではもちろん、タイでは仏教寺院でも頻繁に目にすることができます。
毎年8月末から9月上旬のあたりでガネーシャの生誕祭が行われます。 私の住んでいるムンバイを中心としたマハラシュトラ州では1年で最も華やかにお祝いをします。
祭りは通常11日間行われ、最初の日はガネーシャ・チャトゥルシーと呼ばれます。 このガネーシャ祭りでは、各寺院や家庭にガネーシャ神の像を招いて、大切な客人として盛大にもてなします。何日間かガネーシャ神をもてなした後、ガネーシャ神は海に帰っていきます。
ガネーシャ祭りの祝い方
多くの場合は、町の至る所に特設で作られたガネーシャ神の工場に取りに行きますが、その時のガネーシャ神は目隠しがされています。 一家総出でお迎えに行き、ドラムやキーボード、鐘などを鳴らしながら自宅まで賑やかに行進します。
住んでいるソサイエティで予算を出し合ってガネーシャ神を迎える人も多いです。私の住んでいるソサイエティでも、特設の大きなテントが駐車場に建てられて、住人で順番に番をしてガネーシャ神をもてなします。 また、お寺でもガネーシャ神を迎えます。例年の報道で有名な巨大ガネーシャ像も、ガネーシャ寺院で招くものです。
ガネーシャ・チャトゥルシー(ガネーシャ祭り初日)には、親戚や近所の人が集まってガネーシャ神に向けたプージャ(儀式)を行います。 夕刻から夜にかけて盛大にお祝いする場合が多いですが、それ以外の時間にも、次々と参拝者が訪れてはガネーシャ神の好きなスイーツや果物を捧げます。
ガネーシャ神がいる間は、決して一人にはさせません。必ず誰かがガネーシャ神の像と一緒に過ごします。
ガネーシャ神の好物モーダク
マハラシュトラ州で作られる伝統的はモーダクは、米粉でできた皮の中に、ココナッツとジャグリー(ブラウンシュガー)だけで作られた具を入れてせいろで蒸したものです。
見た目は饅頭のようですが、お味は自然な甘さでとても美味しいです。 蒸しモーダクは日持ちしなく、お店ではほとんど見かけません。以前は各家庭で作っていましたが、最近は忙しいライフスタイルで作る家庭が減りました。
その代わり、チョコレートモーダクなど新しい楽しみも増えました。
水に帰るガネーシャ神
夕方から夜にかけて、ガネーシャ神を送るためのプージャ(儀式)を行います。火をともして、マントラ(祈りの言葉)や捧げものを供えた後には、ガネーシャ神にお願いを聞いていただきます。
ガネーシャ神の大きな耳に口を近づけて、内緒話をするように話しかけます。反対の耳は手で塞いでおかないと、せっかく伝えた願いが反対の耳から逃げてしまいます。
みんなの願いを聞いて頂いた後には、水辺に送っていきます。海岸まで、ガネーシャ神を囲んでみんなで踊りながらパレードをする人も多いです。大きなガネーシャ神の周りには、沢山の太鼓の演奏と数百人の人が踊り、盛大なパレードが繰り広げられます。
海岸まで、何時間もかけてゆっくりと進みます。その間、ガネーシャ神を退屈させないように音楽と踊りが繰り広げられ、ムンバイ中から音楽が途絶えません。
ビーチに到着すると、最後の祈りを捧げて、ガネーシャ神を海に沈めます。海岸には、波で戻ってきた沢山のガネーシャ神の残骸が転がっています。とても不思議な光景です。翌朝には、流されたガネーシャ神を掃除する人たちであふれています。
余談ですが、実は例年、ガネーシャ祭りによる水質汚染問題が深刻になっています。
環境問題への意識が高い人たちは、オーガニックな材料のみで作られたガネーシャ神の像を購入しますが、化学染料が使われたカラフルなガネーシャ神を好む方々もおり、その環境被害は深刻です。
日本でも愛されるガネーシャ神とは?
さて、どうしてガネーシャ神は象の頭に人間の体を持っているのでしょうか?ガネーシャ神は、破壊の神様として知られるシヴァ神と、妻のパールバティ女神の子供です。
ガネーシャ神誕生秘話
ガネーシャ神誕生の神話は諸説ありますが、どれもユニークです。
一説によると、シヴァ神が留守にしているときにパールバティは門番に泥人形を作り、自分の入浴中には決して侵入者を許さないようにと命令しました。 泥人形が門番をしていると、夫のシヴァ神が帰ってきました。泥人形は「誰も入れてはいけない」と命令されていたので、シヴァ神に対しても侵入を許しません。 シヴァ神は、自分が主であると思っているので、見たこともない門番に止められたことに怒り、泥人形の首をはねてしまいました。 入浴を終えたパールバティは、首をはねられた泥人形を見て怒ります。 「私の門番に何をしているの!」 妻を怒らせてしまって困ったシヴァ神は、たまたま次に家の前を通りかかった象の首をはねて、泥人形の頭に付けました。 そうして、新しく命を与えられた泥人形は、象の頭と人間の体を持つガネーシャ神になりました。
富と知恵、学問の神様ガネーシャ神
ガネーシャ神は富を与えてくれる神様として人気があり、特に商売をしている人に好まれます。インドでは、どんな小さな商店でも入口の近くにガネーシャ神を飾っています。インドでお店に入った時には、注意してみてください。レストランでもホテルでも、至る所にガネーシャ神を見つけられます。
また、ガネーシャ神は学問の神様としても知られます。良い人生を生きるためには、自分で人生を切り開くための知恵も大切です。インドで最も読まれている古代の経典バガヴァッド・ギーターも、ガネーシャ神が聖者の話を聞きながら文字に書き起こしたと言われています。
大人も子供もお祭りを一緒に楽しむインドの暖かさ
今回は、インドで特に人気の高いガネーシャ神の誕生祭についてご紹介しました。 宗教的な行事ですが、インドの人たちは本気で楽しみます。ガネーシャ神の象を囲んで、老若男女問わずにみんなで踊り明かし、まるで家族のように24時間家族の誰かが寄り添って過ごします。
客人は家族のようにもてなすのがインドの人たちの美しい文化。神様でさえ、一緒に楽しむ。そんな暖かい時間を体験できるガネーシャ祭りは大好きなお祭りです。