今回は、インドでの結婚や親族との付き合いについてお話をお伺いしました。
今回のインタビューワー
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インドで結婚前のデートについて
あまり日本と変わらないと思います。
映画館へ行ったり、公園でのんびりしたり、車を持っている人ならドライブデートもするようです。 友人は、ドライブデートで夜の美味しい屋台に繰り出しているそうです。 デリーでは、Lodhi Gardenという大きな公園がカップルのデートスポットとしては有名です。奥の方の茂みへ行くと、若いカップルを大勢見かけます。 但し、結婚前の男女の外泊は絶対に許されません。 インド人はまだ大家族の実家暮らしが一般的で、都市部へ出てくる人もシェアハウスが多く、日本と比べて一人暮らし人口は多くないので、結婚前の若い人たちが「おうちデート」をするのは簡単ではないようです。 「今日遅くなったから友達の家に泊るわ」という口実が現実的な言い訳として通じる回数しか外泊できないと聞きます。 最近では、宿泊しなくても日中OYOの部屋を利用できるサービスが始まったので、おうちデートの代わりにOYOでデートをする結婚前のインド人カップルも増えているそうです。 |
結婚を決めた経緯
付き合ってからしばらくして、夫(当時は彼氏)の家族には内緒で同棲をしたいと考えるようになりました。
将来的には結婚しても良いと考えてはいたのですが、(日本で一般的に行われているように)結婚する前に同棲をして、相性をチェックしたいと私は考えていました。 夫の家は実家から遠かったので同棲してもバレないだろうと思っていたのですが、なんと残念なことに、夫の家族の事情によって、夫が夫の実家の近くへ引っ越さなければならなくなりました。 そうすると、夫の親族がいつ夫の家へ訪ねに来るか分からないため、未婚のまま同棲するのは諦めざるを得ません。 インドでは未婚の男女が同棲することは許されないことなので、結婚せざるを得なくなってしまいました。 また結婚をして2~3年するとインドの永住権を申請することができ、そうすると面倒なFRRO手続きもビザも不要になるため、法律的な観点からも結婚することにはメリットを感じられました。 |
戦略的に外堀から少しずつ固めていきました。
私は夫の乳母と仲が良かったので、まずは乳母から小出しに家族に伝えてもらうという形で話を通してもらいました。とはいえ、私から頼まなくても放っておいたら全ての情報が伝わります。 |
結婚に対する旦那さんの家族の反応
夫のお母さんは海外経験もあり、外資系企業でも働いていたため、考え方がとてもオープンで、外国人の私と結婚することについては特に反対はありませんでした。
但し夫の一族はエリート家庭であったため、お義父さんとお義母さんのそれぞれから勤務先企業の従業員数や私の学歴については念入りにチェックされました。 知人のインド人からは「学歴や勤務先企業の確認なんてインドでは世間話の範疇だよ」と言われましたが、私は人の学歴や勤務先企業といった肩書よりも人となりを大切にする家庭環境で育ったため、大きなカルチャーショックを受けました。 |
親公認の関係にはなりましたが、日本とは異なり親の前での言動(PDA: Public Displayed Affection)は慎まなければなりませんでした。
例えば日本では親の前で手を繋いだり、多少のスキンシップをしたりといったくらいの言動をお互い気にしない場合もあるかと思いますが、インドではそれすらもご法度になります。 例えば私が夫の実家へ行った時に、結婚前の段階では私が夫の部屋へ入る時には絶対にドアを閉めてはいけない決まりになっていましたし、リビング等でも私と夫は距離を開けて座らなければなりませんでした。 但し、結婚後は大きく変わります。 結婚前に私が夫の実家へ行った時には私用に別部屋を用意されていましたが、結婚後は同じ部屋になっていました。 |
結婚式と結婚手続きについて
私は元々結婚式にはこだわりがなく、むしろ面倒くさい結婚式はやりたくありませんでした。
しかし「インドでの結婚式の主役は本人ではなく、親が全てを取り仕切る」と聞き、私の場合もそうでした。 私はお義母さんに連れられてお義母さんの希望するサリーを買いに行っただけで、それ以外は何もしていません。 結婚式に関して、私は家族からの強い要望があったため行いましたが、結婚式をやる必要性は感じませんでした。 (「お義母さんに感謝の手紙を書こう」と思いついて書こうとしたのですが、1行書いた後、全く書くことが思い浮かばず、最終的に同僚に書いてもらったことと、招待した友人が激しい二日酔いで結婚式会場へ向かう途中で吐いたことだけが良い思い出です。) 私は結婚式にこだわりがなかったのでどうでも良かったのですが、結婚式にこだわりがある人がインド人と結婚するのは大変かもしれないと感じました。 たまたま親族の希望と合えば良いですが、もし希望が合わず「インドのヒンドゥー寺院ではなくモルディブの教会で挙式したい」などと言いだしたら親族からの評価が下がってしまうかも知れません。 インド人と結婚する方は「インドでは、結婚式の主役は自分ではなく、結婚式は親のもの」と肝に銘じておく必要があります。 |
私は【体験談と解説】インド人との国際結婚~Hindu Marriage Act(宗教婚)について~の記事で紹介されているヒンドゥー婚を目指していました。
ヒンドゥー婚であれば手続きが楽なため、自分としてはそこまで乗り気でなかったヒンドゥー結婚式も経て、ヒンドゥー婚の手続きに臨みました。 しかし、いくらHindu Marriage Actを読んで正しい手続きをしても役所の担当者の裁量でアウトにされてしまうことがあるのが現実です。 色々調べてましたが、最終的に「ヒンドゥー婚の手続きは外国人だから受け付けてもらえない」という結論となりました。 ヒンドゥー婚が可能なのであればヒンドゥー式の結婚式を実施して結婚式の証明書を役所へ提出すれば終わりなのですが、私の場合は結局、裁判所婚の手続きをしなければなりませんでした。 役所からは2,000ルピーの賄賂を請求されましたが、最終的に裁判所婚で結婚が成立しました。裁判所婚の場合、申請して30日以内に異議がなければ結婚が成立します。 結局ヒンドゥー婚はできないので結婚式をする必要はなかったのですが、親族との関係を考慮するとやったほうが良かったと考えることにしました。 |
親族との付き合い
私の場合、夫の親族には非常に気を遣って頂いており、お客様扱いをされています。私が期待されていることは、週末に義実家に顔を出し、出てくるご飯とお菓子をたらふく食べ、昼寝をすることだけです。
夫が無職なので、私が普通にフルタイムで一生懸命働いているだけで「穀潰しの息子と結婚してくれた働き者の嫁」として、高評価をされています。 夫の実家へ訪問した時に、とても遠縁の親戚が次から次へと訪ねてきて挨拶をしなければならないことがありますが、義務と言えばそのくらいです。 しかし私は珍しいケースかも知れません。 インド人と結婚した友人の話を聞くと、結婚相手の親から毎日電話がかかってくるとか、親が突然家へ泊りに来るというケースは珍しくありません。 私の夫の家族は海外経験が多く、外国人にも慣れている家族であることと、夫が無職で一族から穀潰しだと思われているので事情が異なると思いますが、一般的なインド人家庭は日本の家族とは距離感が違う事も多いと思うので、そのあたりは結婚する場合には、より覚悟が必要かと思います。 |
まとめ
以上、炭水化物子さんへのインタビューでした。
どこまでがインド文化の特徴によるもので、どこまでが炭水化物子さん個人の経験によるものかは慎重な見極めが必要かと思います。
例えば、炭水化物子さんの知人のインド人から「学歴や勤務先企業の確認なんてインドでは世間話の範疇だよ」と言われたという話がありましたが、日本でも学歴や勤務先企業を話題にする人は大勢いますし、逆にインドでも肩書より人となりを重んじる人は大勢いるでしょう。
日本人同士でも親族付き合いやパートナーとの信頼関係で頭を悩ませている夫婦は大勢いるので、「育ってきた環境の異なる人同士で価値観を擦り合わせながら新しい家庭を構築していく」という点では、日本人同士の結婚であってもインド人との結婚であっても変わらないと思います。
従って、インド人と結婚する場合にも、相手がインド人だからといって先入観を持って特別な心の準備をするよりも、日本人同士の結婚でも重要とされること(結婚相手本人の人柄や家庭環境を理解して関係構築をすること)が大切なのではないかと感じました。